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【かいねこ】ダーリン  君と手をつなごう

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いろはが引き取られてから一ヶ月が経ち、もしかしたら、レザンが迎えにくるかもしれないという期待も徐々に薄れ、少しずつ新しい生活に馴染んでいく。

改めて顔を合わせたシトロンは、薄暗い酒場で見た時と大分印象が違ったが、あれは酒に酔っていたからだと説明された。
もう二度と酒は飲まないとシトロンは誓ったが、メイコとカイトは「どうせ続かない」と肩を竦める。
いろはは、今までの生活との違いに戸惑いながらも、少しずつ家の中のことを覚えていった。

シトロンが仕事に行くのを見送った後、いろはは屋敷中のハタキ掛けをする。

「あっ、うん、とっ、ひゃあ!」

手を伸ばして、棚の上にハタキを掛けていたが、バランスを崩してよろめいた。
横着しない方がいいと、いろはは頭を振りながら椅子を持ってくる。

「あっ」

足を掛けた瞬間、ふらりと視界が揺れた。
助けを求める間もなく、いろはの体は椅子の下に崩れ落ちる。視界が闇に覆われ、いろははそのまま気を失った。




「いろは、ここにいるのか?」

声を掛けながら入ってきたカイトは、倒れているいろはを見つけ、驚いて立ち止まる。

「いろは!?大丈夫か!?」

慌てて駆け寄り、いろはの体を仰向けにして、頭を持ち上げた。固く閉じられた瞼と、生気のない顔を見下ろし、そっと頬に触れる。

「・・・・・・メイコに見つかったら、大騒ぎになるな」

無言で、いろはの体を床に寝かせ、手袋を外し、いろはの服をはだけさせた。左胸、人であれば心臓のある部分に手を乗せ、頷く。
元通りに服を直すと、いろはの体を抱き上げ、ソファーに向かった。腰を下ろし、ちょうど膝枕の体勢になるよう、いろはの体を寝かせて、優しく髪を撫でる。


ふーっと息を吐いて、いろはが目を開けると、カイトの青い目が、静かに自分を見下ろしているのに気がついた。

「・・・・・・・・・・・・?」

一瞬、状況が分からず、いろはは無言でカイトを見つめ返す。

「ひゃ!?あっ!!ご、ごめんなさっ!!」

理解した瞬間、いろはは弾かれたように起き上がった。

「いや、構わない。疲れているようだったから」
「あっ、だ、大丈夫です!」

慌ててソファーの隅に座り直すものの、「膝枕で寝ていた」という衝撃から、なかなか立ち直れない。
そんないろはに構わず、カイトは首を傾げて、

「いろはは、自分で魔力の補給は出来ないのか?」
「え?」
「前のマスターの時は、どうしてた?」
「えっ、えっと、あの」

答えに窮するいろはに、カイトは眉を顰めた。

「以前にも、急に倒れたりすることが?」
「あ、はい。でも、少し寝れば大丈夫ですから」
「いや、大丈夫ではないよ。確実に磨耗してしまう・・・・・・」

そう言って、カイトは考え込む。
いろはが戸惑った顔でカイトを見ると、カイトは頷き、

「今度から、少しでも不調を感じたら、私に言いなさい。それと、魔道学について、少し教えてあげよう」
「えっ、あっ、そんな、迷惑になってしまいますから」
「いきなり倒れている方が心配する」

言葉に詰まるいろはに、カイトは笑って、

「遠慮せずに、頼ればいい。私達は同志だから」