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リスティア異聞録 4.2章 ライラは生きたいと願った

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「おっと、もう、そんな時間なのですね。えっと、僕、ライラさんの声が大好きです。また、聞かせてください」

長男は自分が妙なことを言っているのにも気付かない様子で慌てて屋敷に戻る。

「大好きなのは声だけなんだ……」

ライラは苦笑しながら後片付けをする。また、少しだけ独り占めできたことを嬉しく思う。知れば知るほどに眩しい人。しかし、それは恋と呼ぶには淡過ぎる憧れ。冬に春を想う心、夏に秋を願う想い、そういった類のものであることをライラは良く分かっていた。だから深く想うことはしない。それで充分に楽しかったから。

その様子をラインハルト夫人は屋敷の中から苦々しく見つめていた。ライラに何か落ち度が有る訳ではないことは分かっている。時を経るごとに美しくなっていくライラが疎ましかったのかも知れない。羽虫の前に置いた灯りのように男の目を引くライラ。その羽虫の中に自分の息子が入り混じることを屈辱に思うのかも知れない。

次に、庭園での二人きりのお茶会に呼ばれたのは、桜が満開になった頃であった。南のバルフォグ湖の辺りでは、もう既に葉桜の緑が目に優しい頃、アラヴィス山では雪解けの小川がまばゆい光を放つ頃。ユニオンの短かい春の終わりが見せる醒めかけた夢の季節であった。

「ライラさん、昨日はどんな本を読んでいたのですか?」

ライラはアヴァロンに伝わる偉大なる魔女の伝説の本について語った。現アヴァロンの女王ミューズの血筋についての本である。また、以前読んだ、異端の魔女ミラについても少し触れる。そして、少し自分も魔法が使えることについても語り、簡単な実演もして見せる。

「ライラさんは博識なんだな…… 僕が知っているのは、人の殺し方…… だけだ」

長男は自嘲気味に笑う。

「…… それは、相手を殺さなければ大切なモノを守れないから……ですよね。どんなに頑張って生きていても、どんなに平和的に生きていても、いつか、どこからか理不尽に奪いにくる者が居る。その者達から弱き者を守るために、大切なモノを守る力として、それを学ばれているのですよね?」

ライラは厳しい目で、真っ直ぐな目で長男を見つめる。満開の桜が一陣の風に吹かれて、二人の間にハラハラと落ちる。

「……」

長男はライラの真剣な眼差しに言葉を失なってしまう。

「守るための刃を磨いてください。そして弱き者を守ってください」

長男が目を逸らす。ライラは逸らした目線の先へ移動して、もう一度、見つめる。二人を包んでいた桜の花弁のヴェールが地面に落ちた時、長男は顔を真っ赤にしながら聞きとれない位の小さな声で、

「……に……られ……ください……」

と、言うと屋敷に駆け戻ってしまった。桜の庭園の満開の下、ライラの時が一瞬止まる。再び、時が動き出した時、聞きとれなかったはずの言葉に返事をした。

「はい……」

彼女には聞こえていたのだろうか。

「僕に守られてください」

という不器用で率直な願いが。
その後、庭園でのお茶会が開かれることは無くなった。庭園には、ライラの話を聞いている姿の代りに、訓練と勉学に励む長男の姿があった。ライラは空いた時間があると、その姿を見守るようになっていた。いつしか、憧れでしかなかったこの想いは、とても淡いけれども、恋と呼べるものに変っていたのかも知れない。