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リスティア異聞録 4.2章 ライラは生きたいと願った

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「アレから、4年経ったのね。ちょっと責任を感じてるわ。行く宛も無い娘をアタイが拾ってしまったら、いずれこうなるのは分かっていたのに。あんたならもっと固い商売につけただろうに」

あれから4年、ライラは娼館で働いていた。各地の小競り合いで行き場の無い不安を抱えた男達の昏い欲望を受け止める仕事、ちっぽけな自尊心を満足させる仕事、赦す仕事。この四年の間、一度だけラインハルトの長男がライラを買いに来たことがある。金を払っているのだからと、めちゃめちゃに犯した後、汚物を見るような目で眺め、鼻で笑い、そして泣きながら帰っていった。ライラには訳が分からなかった。

「感謝……してますよ。でも、固い商売にはつけなかったと思います。固い商売をこなせることと、固い商売につけること…… は違いますから。こうやって裏側から街を見ていると、それがよく分かります」

そう生き延びるために必要であったこと。しかし、「生き延びてどうするのか?」それは分からないが、死にたい訳ではなかった。だから生き延びた。生き延びるために必要だった。だから、それをした。しかし、最近よく思う。もっと他に出来ることが有るはずなのに、ここで、こうして終えるのかと、その人生になんの意味が有るのか、男を悦ばせるために生きることを選びたくて選んだのならば、それで良かったのかも知れない。でも、自分はそうではなかった。生き延びるために選んだ道であった。でも、生き延びた現在はそれ以上の意味を求めてしまっている。幼い時分から、なんでも出来た。そつなくこなすことが出来た。だから、強く何者かになりたいと思うことが無かった気がする。こうやって生きてはきたけれど、全て流されるまま他人の用意した「何者か」という役を与えられ、何者でもないままに、それを上手にこなしているだけなのではないだろうか?

「あんたも大人になったのねぇ…… スレたと言うのかも知れないけど……」

と娼婦は面白くもなさそうに言う。ライラはここで苦笑をする役を与えられ、それをそつなくこなす。こうして何者でもないままに、日々を過していくだけなのだ。だから、本当の怒りも、本当の悲しみも、本当の愛情も、生涯持つことが出来ないのだ。だから、何があっても泣かないのだ。単に他人が用意したシナリオが破綻したに過ぎないのだから。演じている自分には、何も非が無いから。

その時、ライラの中にイメージが走る。

短かい夏の日、川原で空を見上げているイメージ
秘密基地に居た3人。寒がるリリアのために魔法で火を起こすイメージ
満開の桜の中、お茶会の給仕をしているイメージ

「でも、そろそろ辞めようかと思います」

与えられた役に対する反逆。

「え? どこか行く宛でも有るのかい?」

「ありませんので少しブラブラしてみようと思います。結果、ここに戻ってくるにせよ、今度は娼婦になろうとして、ここに来ます。」

自分で道を決めて、誰のせいにすることなく、自分のせいで生きる。

「娼婦になろうと思って娼館の門を叩く馬鹿が居るかい。まあ、元締めには義理を通すんだよ。あんな奴等だけど、一応の世話にはなっているんだから」

翌朝、元締めに辞めたいという相談をしにいくと、散々引き留められはしたものの使う宛の無い金がやたらに貯まっていたので「皆に美味しいものでも食べさせて」と餞別を置いていったら笑顔で辞めさせてくれた。いつでも戻ってきても良いという、本気なのか、冗談なのか分からない別れ際の挨拶付きである。

ライラは私服を持っていなかったので夜のドレスのまま街を歩く。解放感と共に、これからは誰のせいでもなく自分のせいで生きるという罪を犯すということ、自分の足で歩くということへの畏れを感じていた。その時、騎士団募集の貼り紙が目に入った。それが何故か気になって斡旋所へと向かう。

入口まで来てみた時、何かを決めてしまえば、引き返せないということ、全ての感情が役を通してではなく直接自らに降りかかるということへの恐れを感じる。その時、一人の青年の姿が目に入った。

「…… えっと、騎士斡旋所ってこちらでよろしいのかしら……?」

これが、ライラとユーミルの出会いであった。