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リスティア異聞録 4.2章 ライラは生きたいと願った

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ライラより二つばかり上の年齢の男の子だろうか。申し訳無さそうに声をかけてくる。ライラが薪を拾っていると砕けた雪玉の中から赤い木の実を見つける。薪を拾い終えたライラは男の子の方へ向き直って、

「元気ですよ」

と答えながら、ライラが改めて顔を見てみると見覚えの無い男の子であった。黒髪の身体の大きな男の子。ライラは身体の大きさに少し圧倒されながらも笑顔を作って自己紹介をする。

「初めまして……かな? 私はライラ、あなたは?」

「初めまして。僕はルーベウス。この間、引っ越してきたばかりなんだ。で、こっちが……」

ルーベウスの背中に隠れていた小柄な女の子がひょっこりと姿を見せる。

「妹のリリアだよ。よろしくね」

リリアはライラと同い年くらいだろうか? 男のルーベウスに比べて、女のリリアは第一印象の大切さを本能で知っているのだろう。精一杯に可愛く見えるように頑張って笑顔を作ってみせる。それにしても大きなルーベウスに比して、あまりにも小柄な少女であった。

「こちらこそ、よろしくね」

ルーベウスはまだ周りに馴染むことが出来ていなかったのだろう。そして兄妹で一通り挨拶に回ってみたものの雪合戦に混じることが出来ず、なんとなくライラのところへ来てしまった、といったところか。

「ここに居ても寒いし、教室の中へ戻りましょう」

ライラは事情をなんとなく察して二人を連れて教室へ戻ることにした。教室へ入ろうとした時、ルーベウスが誰にとはなく呟いた。

「元気ですか? だけでなくて、もっと色々なことを伝えられるようになりたい……」

教室に戻るとライラの母が暖炉の中で燃え残っていた炭に火をつけて火種を作っていた。ライラは比較的濡れていない薪を火種にくべて暖をとりながら二人を母親に紹介する。

「こちらはルーベウス、こちらが妹のリリア。先日引っ越してきたばかりで、まだ馴染めないみたいなの」

母親は火掻き棒で火の様子を眺めながら答える。

「あら、そうなの? まあ、人の出入りの少ない村だからねぇ…… 私も協力するから、早く馴染めるように頑張ってね。 っと、薪はこれだけ有れば、お茶を用意して、全員の服乾かすのに充分そうね。よし、じゃあ皆でお茶にしましょうか」

こうして学校の初日が終わる。この冬の間、欠席者も無く滞りなく授業は進み、全員がある程度の読み書きと簡単な計算が出来るようになっていた。それに比例して、村の大人達も会合の度に紙とペンを持参する者が増えてきた。ライラの母はそれを見るにつけ、この村は確実に良くなる…… と確信を深めていった。