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リスティア異聞録 4.2章 ライラは生きたいと願った

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ルーベウスの両親は、村人同士の混乱のいざこざの中、殺されたという。今のように 「ログレスの騎士がきたのは、お前ら亡命者を受け入れたからだ」という理屈である。言いがかり以外の何者でもないのだが、誰かのせいにしなければ自分の不幸を受け入れることが出来ないという人間の持つプリミティブなメカニズムのひとつだ。 そして、ライラの父と母は有志を募って現状の打開策を練っているところ、ログレスの騎士達に捕えられて殺されたという。見せしめのため、村人達の前で、父に母の身体を抑えさせログレスの騎士がかわるがわるに犯した後、首を刎ねた。そして、父は妻を自分の意思で犯させた情けない男だと侮辱されながら首を刎ねられた。もう、この村に居ても身寄りの無い3人は途方に暮れてしまっていた。事情を色々聞かせてくれた騎士が申し出る。

「ライラだっけ? もし良かったらうちに来ないか? 使用人が足りていないから、うちで働いてくれると助かる。うちで働きながら自立を目指すと良い。可哀そうだけど、ルーベウスとリリア、君達はもう身元を保証するものが何もない。この村に居ることは出来ないだろうが、この緊張状態の中、ユニオンのどこに居ても、むしろログレスに居るより危険な可能性もある。あとで国境付近まで護送してあげるからログレスに戻りなさい。ファウゼルが統治している間は先王よりもマシだろう。生きていけるはずだ」

ライラには騎士の言うことがよく分からなかった。ユニオンに居て危険な亡命者をログレスに戻して安全であるという理屈が分からない。どういうことなのか問い質したかったが、どう聞いて良いのか分からない。「少くとも今ユニオンにはログレスからの亡命者を置いておきたくない」ということなのだろう。

ライラは空っぽの鍋に火をかけられ続けるような心持ちであった。心に空焚きされ続けるような痛みを感じながら生れ育った村を後にする。この痛みはやがて心に穴を空ける。しかし、いくら心に穴が空いても、穴がどんなに広がっても、涙が出てくることはなかった。ただ、ひたすらにだるかった。