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こらぼでほすと ケーキ9

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「戦って生き残ったら、次の戦いが待っている。そうではないのか? ニール。」
「違うかもしれない。戦うだけじゃないものもある。俺は現在、戦ってないぞ? 」
「あんたには精神戦を戦わせている。俺たちの生き様を静観しているのも戦いのはずだ。」
「ああ、そっちはやってる。でも、実際にMSを動かしてもいないし、見た目には民間人として暮らしているだけだ。マイスターでなくなって民間人に変った。こういう未来もある。戦うだけが生き方だという考え方からは変れ。そのための課題だ。」
 戦闘の只中にいたマイスターから、脇に退いた。刹那たちのために、ここで待っているという戦いはしているが、それは戦闘ではない。未来なんて考えたこともなかったが、どこでどう間違ったか、現在は寺の女房を拝命している。そう考えると、ニールは変ったのだと思う。いつか刹那も、そんなふうに立場が変ることもあるだろう。そういう未来を思い描いておけば、先にあるものを意識する。ニールが思い描くのは、再始動が終わったら子猫たちが無事に戻って来るという未来だ。そのために自分は生きていなければならないし、子猫たちの安息地であるために、ここで踏ん張っているつもりにもなる。それがなければ、おそらく自分はダメだ。黒子猫は、しばし沈黙した。慌てることではない。これから再始動が始まるまでに考えればいいことだ。だから、ニールも作業に戻る。



「未来? そりゃまた大上段だな? 刹那。」
 こういうことは、友人に尋ねてみるものだろうと、悟空に尋ねた。親猫は昼寝の時間だから、境内で鍛錬というか遊びというか、そういう最中に切り出したら、悟空は呆れて立ち止まった。
「おまえは、この先どう生きていくんだ? 悟空。」
「俺か? とりあえず、来年、アカデミーに進もうとは思ってる。ほんで、そこを卒業したら本山へ帰って、しばらくは、あっちで暮らすのは確定だろうな。そっから先は、また、こっちへ戻って来て適当に仕事でもするか、学校にでも通うかして、しばらくしたら、また本山に帰る。とりあえず行ったり来たりしてるんじゃないかな。」
 年齢がゆっくりとしか加算されないから、長い年数、人間界に住むのは難しい。だから、時間を空けて適当に行き来するのだろうと、悟空は漠然と考えていた。神仙界で騒ぎがあれば、それに借り出される場合もあるし、何もなければ、のんびりと暮らすつもりだ。刹那のように、時間が限られていないから未来と言われても、漠然としたものしか思いつかない。
「戦うことはしないのか? 」
「そりゃなんかあれば戦うさ。あっちで異変があれば、金蝉たちのとこへすっ飛んでいって手伝う。」
 金蝉たちがトラブルに巻き込まれたら、今度は守り通すつもりだ。以前は守られていただけだったが、今度は違う。すっかり自分は力をつけた。だから、金蝉に手を取られているだけではなくて、守るつもりだ。そのためなら神仙界を滅ぼしてもいいと思っている。悟空が考える戦いとは、そういうものだ。
「そうなった後は? 」
「終わったら、のんびり金蝉たちも一緒に旅行でもするさ。三蔵たちがいれば、三蔵たちも一緒にさ。それで、どっかで暮らせばいい。また、繰り返す。」
 相手によっては神仙界を追放されることになるかもしれない。だから、そうなったら、特区ではない場所に居を移して暮らせばいい。何年か暮らして、また場所を移動して、と、繰り返すだろうと、悟空は想像する。別に、神仙界には拘っていない。拘るのは、金蝉たちや三蔵たちのことだ。
「戦って終わりではないんだな? 」
「当たり前だ。騒ぎが終わったら、いつもの暮らしに戻る。そういうもんじゃね? おまえだって、そうだろ? 再始動の後、ママんとこへ帰って来るだろ? その後、また、しばらくはこうやって暮らすんだ。それからのことは知らないけど、キラたちと一緒に、プラントに行くっていうのもありだし、うちで寺の仕事を手伝っててもいい。もしかしたら、また再再始動っていうのもありだろ? 延々と戦ってばかりってことはない。」
 つまり、悟空には死ぬという考えはないのだ、と、刹那は理解した。どうなろうと生き残って、また生きていくということらしい。
「死ぬつもりはないんだな? 」
「死ぬつもりで生きてるのはおかしいぞ。先を考えるから未来を描くんだ。それって生きてる前提の話だろ? 刹那。」
「なるほど。そういうものか。」
 大雑把にだが、なんとなく悟空の言うことは理解した。形にはならないが、未来を考えるというのは生きている前提であるということは判った。ニールが言うのは、そういうことだろう。
「おまえも簡単に死ねるとは思ってないよな? 俺は、おまえのおかんを預かるだけだからな。歌姫さんとキラは、おまえらを死なせるつもりはないぞ。絶対に、どんな姿になってても生かして、ママんとこへ連れて来る。」
「ああ、承知している。」
「だから、ママと次に逢ったら何をしようとか考えればいいんじゃね? ママも、そういうこと考えてるんだと思うからさ。」
 始終、悟空はニールの傍に居る。だから、「これ、刹那には大きいかなあ。」 とか、「ティエリアの好物になりそうだなあ。」 とか、「アレルヤたち、元気で居るといいんだけど。」 とか、何気に呟いている声も聞いている。次に逢う時に、これを用意して、あれに連れて行って、とか考えているのだ。もう逢えないなんてことは考えから外しているのを知っている。戦うだけではない生き方というのは、そういう時間もあるということだ。
「次は看病だ。」
「ああ、そうだろうな。その次は? 」
「・・・・桜を見る。」
「桜? 」
「ニールが、ここの桜を見せたいと言っている。」
「春だけだからなあ。その次は? 」
「・・・わからない。」
「んっと、じゃあ、そこからだな。ママと逢ったら何をしたいか考えろ。そういうのでいいんじゃねぇーか? あんま難しく考えても無理だ。」
 とりあえず、そういうところからでいいはずだ。これに組織のほうのことや、世界への武力介入とか、いろいろと加味されていけば、おのずと刹那の未来となるだろう。さて、続きをやろうぜ、と、悟空が少し距離を空ける。手をくるくると回せば、そこには如意棒が現れる。刹那のほうも短剣を両手に構えた。悟空なら傷つける心配はないから、刹那も本気で戦える。ざしゅっと砂利を踏んで飛び込む体勢になると、先に悟空が如意棒を伸ばしてきた。
「この後、長剣もやるからな。」
「了解した。」
 接近戦型MSに搭乗している刹那は、こういう戦闘体勢の訓練が何より重要だ。だから、悟空も時間のある限り手合わせをする。これで、刹那の攻撃力や防御力が上がれば、生存確率も跳ね上がるからだ。


 二日ほどして、刹那は放浪の旅へ出かけた。それを見送ると、寺の女房は風邪を引いたのか、寝込んでしまった。毎度の事ながら、落ち込むと体調を崩す。三蔵のほうは、こればかりはしょうがないと諦めているから、即座にハイネに本宅へ移動を命じた。さっさと治療して治してもらうほうが手っ取り早いからだ。
 だが、治療が終わったらトダカが横手からニールを攫って行ってしまった。少し里で静養させると言われてしまうと反論は難しい。
「トダカさん、これ。」
作品名:こらぼでほすと ケーキ9 作家名:篠義