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こらぼでほすと ケーキ10

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 助手席の悟空は、納得がいかないという顔で、首を傾げている。坊主の誕生日も、寺の女房は、ちゃんとケーキを焼いて、坊主の好物を並べていると思うのだが、それにお返ししているのは、悟空でも見たことがない。
「おまえだって、三蔵の誕生日なんてスルーしてんだろ。」
「んなもん、今更だろ? 悟浄や八戒にも、俺はしてないんだしさ。」
「だから、そういうことなんですよ、悟空。三蔵は身内だと思っているから、スルーなんです。」
「そう言われれば、そうだな。」
「そんな優しいこと言わなくても、あいつは面倒くさがりってことでいいだろ? 八戒。」
「まあ、有体に言うとそうなんですけどね。あはははは。」
 坊主は、そういうことは面倒な性質だ。だから、そういうことはスルーの方向だし、ついでに歌姫が居ると言われたら行くわけがない。坊主は、歌姫に口で勝てた試しがないからだ。キラたちなら、腕力で片付けられるのだが、歌姫では、そうもいかない。
「四月に入ったら、漢方薬治療をやりますから、また二週間くらい、ニールは借り出しますよ? 悟空。」
「半年に一回だっけ? わかった。それだと、ママ、うちの桜見られないな。」
「見たがってるんですか? 」
「刹那が、そんなこと言ってたからさ。」
 寺の桜が満開になるのは四月の頭ぐらいだ。時期的に、その辺りを予定しているから、確かに無理だろう。二週間もすると、散った後ぐらいに帰ってくることになる。とはいうものの、四月の頭が時期としてはいいのだ。その頃は新しい年度の初めで、店のお客様も少ない。それにシンとレイがプラントへ遠征するから、三ヶ月ばかりは賑やかし役のシンとレイが留守だから、そこいらをレアホストのニールに出勤してもらって穴は埋めるつもりだからだ。経理部長の八戒とフロアマネージャーのアスランは、店の経営に関しても妥協する気はない。曲がりなりにも経営しているのだから、利益は上がらなくとも、そこそこの数字は残しておきたいからだ。それでなくとも、今年の後半からは店の営業ができるかも怪しいのだから、その前後は休みたくない。
「今年は諦めてもらうしかないですね。来年は、満開の後で治療をするように考えます。」
「あのさ、うちの枝何本か持っていってもいい? 八戒。」
 見たいと言うなら、少しぐらい見せられないか、と、悟空は考える。咲く前のツボミを冷蔵庫に入れれば開花の時期は遅らせられるので、そうすればいいですよ、と、八戒も、それを教える。それなら何日か遅らせて開花から散るまでを見られるだろう。
「そんな大層なことしなくても買ってくりゃいいんじゃね? 」
「残念でした、悟浄。花というのは時期を先取りして売られるものなので、その時期には花屋にはありません。強いてあげれば、ここより高地にある桜を運んでくることになるでしょう。そのほうが手間がかかります。」
「ありゃ、それは面倒だ。」
「悟空、ツボミが膨らんだら教えてください。」
「わかった。」
 そんな会話をしていたら歌姫様の本宅に辿り着いた。ここからヘリで移動する。どっこいせ、と、悟空は荷物を持ち上げてクルマから降りる。年少組各人が、高額ではない贈り物を用意していた。今年の悟空は、ふかふかスリッパだ。廊下は寒いから、足元を防寒するためのものだ。実は、坊主にも色違いを渡しておいた。誕生日どうとか言うより、実際に使えるものを考えると寺の住人には必要なものだったからだ。そして、自分のも買ったので、住人は色違いのスリッパになる。今までは裸足だったり靴下だけだったが、一般人のニールが居ついて、そういうことを発見した。沙・猪家夫夫のほうは、これといって用意はしていない。今回のイベントの仕切りをすることで、お祝いの代わりということにしている。大人組に関しては、そういうものは準備しなくてもいい、と、以前にニールにも申し渡してある。そうでないと大人数だから毎月、誰かのお祝いをすることになってしまうからだ。




 別荘へ空港の民間会社のヘリで移動して、そのまま裏庭へ歩いた。ここがかなり奥が深いのはニールも知っていた。一度、迷子になったことがある。
「南西に進むと池があります。」
 レイはコンパスとGPSの計器を手にして、ピクニックの方角を示す。自然のまま放置されているように見えるが、ちゃんと手入れはされていて、庭には池や川などもあるのだそうだ。荷物はシンとレイが持ち、のんびりと前へ進む。その後を、ニールとトダカがついていく。
「レイ、何キロぐらいあるんだい? 」
「およそ三キロ。時間で言うと徒歩四十分です。」
「歩けるかい? 娘さん。」
「走れって言われたら無理ですが、歩きならいけるでしょう。スーパーまで徒歩十五分を往復してますから。」
 以前なら十キロや二十キロは軽くランニングしていたのだが、さすがに、その体力はない。寺に滞在した刹那が走っているコースを試しに走ろうとしたら、途中で息切れしてしまった。今のところ、そういうトレーニングは感心しない、と、ドクターからも注意されたので、適当に歩くぐらいにしている。
「疲れたら言ってください。俺がおぶります。」
「大丈夫だよ、レイ。」
「ザフトの訓練で加重五十キロでランニングを何キロもやっていましたから、ママぐらいなら持ち上がります。」
 もちろん、シンやレイたちは、さらに過酷なトレーニングを積んでいるから、それぐらいはお茶の子さいさいだ。
「俺もおんぶでならいけるぜ? ねーさん。」
「それなら、トダカさんが疲れたら頼むぜ。」
「おいおい、娘さん? 私は、これでも元軍人なんだけどねぇ。」
「だって、トダカさん、去年、ギックリ腰をやったでしょ? 無理したら寒い時はダメですよ。」
「そこまで心配されるほど年寄りじゃないんだけどなあ。」
「用心に越した事はありません。疲れたら休憩もアリなんだから。」
 そろそろ春めいた陽気ではあるが、それでも用心はしている。トダカの腰にはカイロが貼り付けてあるし、ニールも同様だ。林の木陰に入れば、やはり涼しいぐらいの気候だ。歩いていれば、体温も上がるだろうと、トダカが声をかけて歩く。

 庭は、どこまでも手入れされていて、芝生の中に小道がある。そして、周囲には配置良く木々が植えられていて、それを見ているだけでも、いいピクニックだ。原生林のようになって自然のままの形のところもあるのだが、今回は道があるところを歩いている。
「ほんと、広いもんなんだな。俺、もっと原生林みたいなとこは歩いたけど。」
「イングリッシュガーデンの、いろんな種類が配置されているそうです。あそこは、ロックガーデンと言って岩と草で纏められてるらしいですよ、ママ。」