幸せになろうよ
「はー、もう食えねぇー」
水族館から戻り、ホテルの展望レストランで夕食を済ませて部屋に戻ると、綱海はソファに深く沈んだ。
「なんか飲むか?」
「んー、もう水の一滴も腹に入りそうにねぇや」
風丸は備えつけの冷蔵庫からオレンジジュースの瓶を取りだすと、蓋を開けた。
(結局、話せなかったな……)
食事中、いつ別れ話を切りだそうか風丸はきっかけを探していたが、ホテル最上階にある展望レストランにふさわしい夜景と豪勢な内装と、豪華な食事に圧倒されてすっかり話すタイミングを逃してしまった。綱海も同様に圧倒されたのか珍しく萎縮し、どこか落ち着きなくそわそわとして「これ、うまいな」くらいしか話していなかった。
(……いま、話すか)
風丸はオレンジジュースを一気飲みすると、ソファに寝ている綱海のそばへ向かう。すると突然、綱海が起きあがった。
「海でも見に行くか」