二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【シンジャ】Love Collection【C81】

INDEX|2ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

 八人将である彼女は、金銭的に困窮していない筈である。何故こんな所で働いているのかという事が分からず動揺しながらもピスティの元まで行くと、悪戯を見付かった子供のような様子へとなった。隣に座っていた客を席から退かせ何故こんな所で働いているのかという事を訊ねる事によって、頭痛がする事になった。
 金銭的に困窮していない彼女が何故こんな所で働いているのかというと、酒を飲みにこの国営商館へとやって来ていた時、勧誘に引っ掛かりここで働く事になったそうだ。シャルルカンが自分の所に慌てた様子で現れたのは、よく飲みに来ているこの店でピスティが働いている姿を見て、自分に報告しなければいけないと思ったからだそうだ。国民から絶大な信頼を得ている八人将の一人で自分がある自覚を持って欲しい。ピスティに対してそう思うだけで無くそれを言うと、急に彼女は泣き出した。
 それを見て周りは慌てた様子になったのだが、自分は全くその姿を見ても動揺する事は無かった。それは、彼女が嘘泣きをしている事が分かっていたからである。嘘泣きは通用しないという事を告げ、一緒に王宮に戻って貰うという事を告げると、嘘泣きを止め仕方が無いという様子へとなった。
 思っていた通り嘘泣きをしていた彼女とこのまま王宮に戻るつもりであったのだが、そこにこの店の店主がやって来た。店主にピスティを連れて行くという事を告げると、店主から困るという事を言われる事になった。店の女の子が今足り無いので、ピスティが抜けると困る事に店がなるそうだ。そこからまさか、ピスティの代わりに自分がここで働くという話しになるとは思っていなかった。
 そちらの事情は分かったがまだ十八歳の彼女をここで働かせる事はできないと言うと、店主からどうしても彼女が無理ならば自分でも良いという事を言われる事になった。性別不詳という事を言われる事や、女性に間違われる事もあるが、自分は男である。更に、成人を疾うに迎えている二十五歳である。そんな自分に暫くの間で良いのでここで働いて欲しいという事を店主が言って来た事に混乱した。
 自分は勘違いをしているのだ。店の女性としてでは無く、従業員として働いて欲しいと彼は言っているのだ。自分に店の女性として働いて欲しいと彼が言う筈が無い。そう思い、ピスティを解放する事と期限を一週間にする事を条件に、仕事を終わらせた後ここで働く事を承諾した。――店の店主が店の女性として自分に働いて欲しいと言ったのだという事を、この後店の奥で着替えをする事によって知った。

(着飾ったら男だと分からないとか……! 確かに性別不詳と言われたり、女の方と間違われる方もいますが、なんで私がこんな格好でこんな事を……! こんな格好でこんな事をしてる事をシンに知られたら)
 シンドバッドに知られた時の事を考えると、恥ずかしさから目眩がした。
 彼の事であるので、自分の格好を見て爆笑するに決まっている。そして、暫くはこの格好を話しのねたにするに決まっている。絶対にシンドバッドにだけは見られたく無いと思いながら、眷属器を外し装飾品を身に付けて行く。
 眷属器とは、シンドバッドが持っている金属器から力を与えて貰う事が出来る武器である。普段は絶対にそれを外す事は無いのだが、ここで働いている間はそれを外していた。それは、それを付けたままでも良いかという事を店主に訊ねると、駄目だという事を言われてしまったからである。
 店主の言葉に素直に従う事が出来たのは、ここで命の危険に晒されるような事が起きる事が無い事が分かっていたからだけでは無い。眷属器を使わずとも並の相手ならば、複数纏めて掛かって来ても倒す事が出来る自信があったからだ。
 華奢な見た目をしているが、重い眷属器を自在に操るジャーファルは、見た目に反して究竟であるだけで無く武術に長けていた。
 装飾品を身に付けたので、後は薄化粧をするだけである。男に産まれて来たうえに女装趣味の類や女になりたいという願望を持っていなかった為、ここで働くようになってから初めて化粧をした。最初だけ店の女性にして貰い、それ以降は自分でしている。器用な方であるので、一週間でそれなりに化粧をする事が出来るようになった。
 化粧をする事が出来るようになったが、それを活かす場が今後あるとは思えない。
(これも明日で漸く終わりですね)
 化粧を終わらせ鏡の中の自分を見詰めながら一息吐きながらそう思ったのは、明日で約束の一週間が経過するからである。
 店主からもう暫く働いて欲しいという冗談だとしか思えないような事を言われていたが、もう暫くここで働くつもりは無い。店主は、どうも自分がこの国の政務官であるという事が分かっていないようである。分かっていれば、こんな事を自分に頼んだりしなかっただろう。
 二十五歳という年齢にも拘わらず、ジャーファルはこのシンドリアの政務官をしていた。王であるシンドバッドから直々に服を作れという事を言われていたのは、彼とは建国前からの付き合いであったからだ。
(そろそろ行きますか)
 いつまでもここにいる訳にはいかない。自分の後から店にやって来た者たちがまだ着替えをしていたが、もう店が開く時間である。片付けをして店の奥から出ると、直ぐに店の従業員から声を掛けられる事になった。
「ジャーファルさん、指名のお客さん来てるよ」
「はい」

(本編に続く)