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【シンジャ】カリソメ乙女【C81】

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「お前が仕事以外の事を頼むなど珍しいな」
 驚いた顔でそう言いながら体を起こしたシンドバッドは水煙草の吸口を戻すと、長椅子の上で腕を胸の前で組み胡座を掻く格好になった。シンドバッドの姿は王らしい物であった。王になった当初は王らしさが欠片も無い彼であったが、今は王らしくなっていた。それは、政務官らしくなったと最近頻繁に言われる自分も同じだろう。
「出来る範囲の事ならば叶えてやるぞ」

「有り難うございます。お願いというのは、私と寝て頂きたいというものです。勿論、添い寝して欲しい訳ではありません。同衾して頂きたい」

 シンドバッドが自分の言葉に驚く事は予想していたのだが、彼の驚きようは自分が予想していたものよりも激しいものであった。眉間に皺を寄せて自分を見たままとなっていたシンドバッドは、自分から目を離すと深い溜息を吐いた。
「……お前に仕事をさせ過ぎてしまったようだな。大分国も安定して来た事だし、数日休みを取ったらどうだ」
 仕事の疲れから錯乱して自分がこんな事を言ったのだと彼は思っているようだ。否、本気で彼はそう思っている訳では無いのだろう。そう思いたい為という事もあるのだろうが、自分に先程の言葉を考え直させる為にそう言ったのだろう。
 先程の言葉は考えた末に言った言葉であるので、そんな事を言われたぐらいで先程の台詞を撤回するつもりは無い。その程度の事で撤回するような気持ちで、そんな事を尊敬の対象であるシンドバッドに言わない。
「休みは必要ありません。私は正常です」
「正常だったらそんな事など俺に言わんだろ。どうしてそんな事を俺に頼もうと思ったんだ」
「先日月の物が来ました」
 月の物というのは生理の事である。普通ならば疾うにそれがやって来ている年齢なのだが、それが来たのは先月の事であった。
 自分の言葉を聞き驚いた顔へとなった後、複雑そうな顔へとシンドバッドはなった。
「……そうか」
 シンドバッドが驚いた顔になったのは、まだ月の物が来ていない事を知ったからでは無い。自分から月の物が来た事を報告されたからである。
 月の物がまだ来てない事を、言うまでもなくシンドバッドに報告した事は無い。しかし、シンドバッドがその事を知っていた事を断言する事が出来た。本人に確認した事がある訳でも無いというのにそう言い切る事が出来るのは、彼が女誑しで有名である事と鈍感なように見えて勘の良い男であるからだ。
「女になってしまったので、一度ぐらい経験しておきたいと思ったので、こうやってあなたに頼みに来ました」
 自分の話しを聞き、シンドバッドは怪訝な顔へとなった。
「そんな理由で……。本当にそれだけが理由なのか?」
「では、あなたの事が好きだからで良いです」
 勿論、本気で言ったのでは無い。確かにシンドバッドの事は好きだが、シンドバッドに対して持っている感情は恋愛感情とはかけ離れたものである。女慣れしているシンドバッドが自分のそんな言葉を本気にする筈が無く、自分の言葉を聞き大袈裟な溜息を彼は吐いた。
「嘘を吐くならもっと上手に吐いてくれ」
 シンドバッドがそう言ったのは、信じさせるつもりが全く無いぞんざいな態度で先程自分が言ったからなのだろう。
「どんなに上手に吐いても、あなたがこの言葉を信じる事は無いじゃないですか」
「当たり前だろ。それで、どうしてそんな事を俺に頼もうと思ったんだ?」
「今言った通りです」
 彼が求めている返事はこれで無い事が分かっていながらそう言うと、シンドバッドが渋い顔へと再びなった。
「もう少し詳しく話してくれないか」
「もう少し詳しく話したら、私の望みを叶えてくれますか?」
 シンドバッドが求めている答えがこれでは無い事が分かっていながら先程ああ言ったのは、この台詞を彼に言う為であった。今の台詞を言う為に先程の台詞を自分が言ったのだという事を、察しの良いシンドバッドは察したのだろう。策略にはまってしまったというような顔になった。
 シンドバッドはそう簡単に相手の策略に嵌るような男では無い。それどころか、策略に嵌る振りをして相手を策略に嵌める事を得意としている男である。そんな男が自分の策略に嵌ったのは、相手が自分だからである。
「詳しく話してくれたら、考えても良い」
「駄目です。私を抱くと約束しなければお話する事は出来ません」
「ジャーファル」
 厳しい声でシンドバッドから名前を呼ばれたが、そんな事で気持ちを変えるつもりは無い。シンドバッドが折れるのを黙って待ったのだが、渋い顔をしたまま彼は何も言おうとしなかった。彼も自分が折れるのを待っているのだろう。勿論、主張を曲げるつもりは無かったので、黙ってシンドバッドが折れるのを待った。
 瞬きすら殆どせず互いに互いの顔を見るだけという時間を、どれぐらい過ごしただろう。平行線をこのまま辿りそうな中先に言葉を発したのは、シンドバッドの方であった。
「一つ質問をさせてくれ」
「何でしょうか?」
「俺がもしも詳しく話しを聞いた結果駄目だと言ったら、お前はどうする?」
 シンドバッドの質問は予想外のものであった。正直にその質問に答えると、誰かと寝るのは諦めるである。しかし、それを言えば彼が自分を抱かないという事を言う事になる。シンドバッドの質問に対して何と答えるのかという事は直ぐに決まった。
「そうですね。他を当たります」
「お前にそんな事ができる筈が無いだろ」
 シンドバッドの言う通りである。シンドバッド以外の相手は考えられなかった。それは、自分が女である事を今その事を知っている者以外に知られると困るからである。そして、シンドバッド以上に都合の良い相手を見付ける事が出来そうに無いからである。勿論、彼からそう返される事は予想していたので、彼のその言葉に動揺する事は無かった。
「では、あなたに抱いて貰うのは諦めて別の相手に頼みます。明日からの仕事に差し障りますので、今の言葉は忘れて下さい。先程あなたから言われた通り明日は休む事にします。初めては苦痛を伴うものらしいので、明日仕事をする事ができるかどうか不安ですので」
 微笑を浮かべながらそう言った後胸の前で両手を組み、頭を下げてシンドバッドに背中を向ける。そしてそこから歩き出すと、直ぐに後ろから自分の名前を呼ぶ鋭い声が聞こえて来た。
「ジャーファル!」
 聞こえて来た声を無視して今まで居た間を離れると、後ろから先程聞こえて来たものより鋭い声が聞こえて来ると共に、後ろから肩を掴まれた。
「ジャーファル、待て」
 肩を掴んでいるシンドバッドの手の力は、痛みを感じるほど強いものであった。予定通りに事が進んでいる事に内心ほくそ笑みながら体を揺らし、肩を掴んでいるシンドバッドの手を自分から離そうとする。
「嫌です。離して下さい」
「分かった。分かった」
 嫌がっている演技をしながら体を揺らしていると、後ろからシンドバッドのそんな声が聞こえて来た。待っていた言葉を聞き体を揺らすのを止め、後ろを振り返る。策謀が上手くいった事を喜んでいたが、それを態度に出せば先程の行動と言動が演技であった事を彼に知られてしまう事になるので、態度に出す事はしなかった。
「それでは私を抱いて下さいますね?」