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【シンジャ】カリソメ乙女【C81】

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「分かった。俺は約束は守る男だ。その前に、さっきの質問に答えて貰おうか」
 手振りで話していたシンドバッドは、言い終えると胸の前で腕を組んだ。
「何故したいと思ったのかという事は、先程言った通りです。純粋な好奇心です。それ以外に理由はありません」
 自分の言葉を聞きシンドバッドは眉間に皺を寄せた。軽い気持ちで様々な女性と寝ているというのに、自分の考えを彼は理解する事が出来無いのだろう。別の理由を彼は求めているようなのだが、閨事をしてみたいと思ったのは今言った通り好奇心からである。他に理由は無い。
「何故それをあなたに頼む事にしたのかというと、私が女であるという事を知っていて、女扱いに慣れていて、一夜限りの火遊びで済ませてくれそうだからです」
 女誑しであるシンドバッドは、特定の相手を作らず常に閨の相手を変えていた。自分が知っている限り、シンドバッドが寝た相手は軽く百人は超えている。それだけの相手と閨を共にしているシンドバッドの事であるので、一夜関係を持っても少し経てば自分と寝た事など忘れてしまう筈であると思っていた。
「そんな風に俺の事を思っていたのか……」
 そう言ったシンドバッドの態度は、心外であるといわんばかりのものであった。
「そんな風に思われるような行動をあなたが取っているからでしょ」
 自分の言葉を聞きシンドバッドが渋い顔になったのは、特定の相手を作らず様々な相手と閨を共にしている彼に、何度も自重してくれという事を言っていたからである。
 自分のその台詞に対して分かったと言っておきながら、シンドバッドは全く自分の行動を改めようとしなかった。房事を一度経験しておきたいからという理由で、こうやってシンドバッドに抱いてくれという事を頼むという行動に自分が出たのは、シンドバッドにも原因があるのかもしれない。シンドバッドの側にいて、房事を愛する相手としかしてはいけない行為であると思う事が出来る筈が無かった。
「理由を答えたのですから、約束を守って下さいね」
「……分かった」
 渋い顔を浮かべながらそう言ったシンドバッドと共に、この後寝台がある間に移動する事になった。





01.Churitsupu

 天蓋が付いた豪華な寝台には、美しい布が敷かれその上には柔らかな座布団が幾つも並んでいる。大きな寝台があるこの間は、シンドバッドが寝起きしている間である。ここに入るのは初めてだという訳では無い。就寝中のシンドバッドに急いで伝えなければいけない用件が出来た時に何度か入った事がある。しかし、寝台に座ったのは初めてである。人の寝台に座るような真似は普通しないので、それは当然だろう。
 抱いて貰う事になれば緊張するのかもしれないと思っていたのだが、全く緊張していなかった。今思っている事は、挿入の時どの程度痛いのだろうかという事や、体内に異物を受け入れるとどんな感じがするのだろうかという事であった。
 寝台へと座る事を自分に促したシンドバッドを凝視していると、こちらへと彼がやって来る。今からどうするのだろうかという事を思っていると、自分の横を通り過ぎ寝台へと彼は上がった。
「ジャーファル」
 寝台の上で胡座を掻く格好になっている彼が、こちらへと来いという意味で名前を呼んだのだという事が分かり、シンドバッドの元に向かう。何処まで近づくべきなのだろうかという事を悩みながら近づいて行くと、こちらへと片手を伸ばして来たシンドバッドに腕を掴まれる。
「あっ……!」
 ぐいっとシンドバッドに腕を引っ張られた事により、彼に抱き付くような格好になった。
「突然何をするんですか。引っ張るのならば引っ張ると言って下さい」
 何の前触れも無く腕を引っ張ったシンドバッドに苦情を言いながら体を離そうとしたのだが、背中にシンドバッドが手を回して来た為離れる事が出来無くなった。自分から離れるなという意味である事が分かり体を離そうとするのを止めると、中途半端な状態であった体を彼に引っ張られる。
 シンドバッドの意向にそって体を動かしていくと、胡座を掻いて座っている彼の体に前から抱き付くような格好へとなった。否、抱き付くような格好では無く実際に抱き付いているので、抱き付く格好になったと言うのが正しいだろう。背中に手を回している彼の体に抱き付いたまま次の行動にシンドバッドが移るのを待った。しかし、シンドバッドはなかなか次の行動に移る事は無かった。
 暫くは彼が次の行動に移るのを大人しく待っていたのだが、徐々に大人しく待っている事が出来無くなって来た。
「まさかこのまま抱き締めるだけで何もしないつもりじゃ無いでしょうね?」
 抱き締めるだけで終わらせるつもりでは無いのだろうかと思い、そう言いながらシンドバッドから軽く体を離し顔を見上げた。自分の体を抱き締めている腕の力を緩めて自分を見下ろしているシンドバッドは、自分の発言を聞き今にも溜息を吐きそうな顔へとなった。
「まだ疑っているのか。約束は守ると言っただろ」
「でしたら何故何もしないんですか」
 自分を抱くという約束をしたというのに抱かないつもりなのかもしれないという気持ちを、シンドバッドのその言葉を聞いても消し去る事は出来無かった。
「何もしていなくは無いだろ」
「ただ抱き締めあっているだけじゃ無いですか」
「ただ抱き締めあうのも行為の一環だ」
 そう言ったシンドバッドの声は諭すようなものであった。
「……分かりました」
 抱き締めあうのも行為の一環であるという彼の言葉を納得する事は出来無かった。それにも拘わらずそう言ったのは、今まで全く経験が無い為シンドバッドとこの事で口で勝つ事が出来無い事が分かっていたからである。再び体を強くシンドバッドに抱き締められたので、自分も彼の体を再び強く抱き締める。シンドバッドは体温の高い男である。こうやって抱き合う事によってそんな彼の体温を感じる事になった。
 シンドリアは一年中温暖な気候であるので、今は半袖を着ていても暑いぐらいの温度である。そんな中で自分よりも体温の高い相手と抱き合っているというのに、全く不快な気持ちになる事は無かった。勿論、暑いという事は思っていたが、離れたいとまでは思う事は無かった。大人しく彼と抱き合っていると、徐々に抱き締められている事に心地良さを感じるようになって来た。
(まさか眠らせるつもりでこんな事をしてるんじゃ!)
 眠気に襲われている最中はっとした。
 疑いの気持ちをシンドバッドに対して持っていると、体を抱き締めている腕の力が緩む。シンドバッドが腕の力を緩めたので自分も腕の力を緩めると、普段とは違う声で名前を呼ばれる。
「ジャーファル」
 自分の名前を呼ぶシンドバッドの声は酷く優しいものであった。こんな風に彼から名前を呼ばれるのは初めての事では無い。それでも頻繁にある事では無いので、そんな風に彼が自分の名前を呼んだ事を不思議に思いながら顔を上げる。
 視線が繋がったと思うと、シンドバッドの顔がこちらへと近づいて来る。