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ジャイアントほむ~散りゆくは美しきQBの夢

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 この期に及んでこのような甘いことを口走るまどかにキュウべえはいらだちを覚えた。そしてキュウべえはそのいらだちをぶつけるべく、自分に課したルールをねじ曲げてまで、この少女を犯すことを決意した。

 それはキュウべえがここまで追いつめられた事と、そこまでして自分に逆らおうとする少女やその親たちが理解できないことへの恐怖もあったのかも知れなかった。

 どうせ自分には無限の時間がある。確かにまどかを失っても別の少女を、そう、いつかはほむらのような平行世界を旅する願いを叶えようとする少女に出会うこともあるだろう。
 
 だが、宇宙を創造するまでに因果を背負ったまどかを魔女に出来るこの機会をみすみす失うのも「もったいない」と思った。物事は何事も効率的でないといけない。そのためには少女に自発的に願いを叶えさせるという今までのルールを破ってもかまわない・・・。

 キュウべえは自らの意志で少女を魔法少女に変えるべく、耳に似た触手をまどかの胸に突き刺した。

「あ、ああぁぁ!」

「さぁ、まどか! 言え、願いを。ボクがその願いを叶えてやろう! そして君は最強の魔法少女に、最強の魔女になるんだ!」

 これでようやくこの星のノルマが終わる。そうキュウべえは胸の内で計算をした。

 まどかの心の中を読みとって、魂を抜き出す。その際に願いを叶えて魂の力を「弱める」。それで作業は終わりのはずだった。

 だが――。

「バ、バカな。まどか、君には願いはないのか! 死んでしまったマミを、ソウルジェムが濁ろうとする魔法少女を救おうという気持ちすらないのか」

「かかったわね、キュウべえ」

 低くなったまどかの声に、一瞬キュウべえはおびえを感じた。

「キュウべえ。あなたは昔から詰めが甘いわね」

 まどかは効果的に言葉を切った。
 
 昔から? そう思ったキュウべえの疑問に答えるようにまどかが続けた。

「キュウべえ、あなたはファウスト相手に出し抜かれた時からぜんぜん進歩してないわね。精神寄生体、マインドスナッチャーさん」

 真の名前を告げられた鬼や悪魔の気分をキュウべえは味わった。何故この女は僕の過去を知っている!?
 
 まどかはファウストという名前を出しただけでなく、キュウべえの正体を語った。

「き、君はどこまで知っているんだ!」

 今まで一方的に情報を握っていたキュウべえの情報の非対象性が崩れたことをキュウべえは悟った。

「あなたは調子に乗りすぎたのよ。あなたが見せてくれた過去の魔法少女の歴史の中に、一人見慣れない男性がいたの。そのことをほむらちゃんに伝えた後、あなたのことをみんなで必死に調べあげたわ。そしてあなたが願いを叶える振りをして、その実少女から魂の力を弱め、そのあとから自らの欲に抗しきれない弱った魂を回収していたことにも気付いたわ」

「あなたははるかな昔から人類に干渉を続けてきたと言った。そして宇宙の安定のためにエネルギーが必要だとも。でも本当? 人間の感情がエネルギーだとすれば、あなたたち感情を持たない生命体がそれをエネルギーとして摂取する可能性もあるわよね?」

 キュウべえは相手の情報を聞き出すため、あえて相手にしゃべらせるつもりだった。

「サンジェルマン、魔人カリオストロ、メフィスト。彼らもあなたの分身だとしたら。そして世界中にあなたたちの話があることもわかったわ」

「パパが言ってた。人間は元々願いをかなえるだけの力をその魂のうちに秘めている。だから人類はファミコン程度のコンピューターで月面に行くという無謀なことも出来た。そしてそれを叶えたのは人々の魂の力と絆の力。もしキュウべえが願いを叶えるために少女に魂を差し出させるのなら、人間が本来持っている魂の力をキュウべえに奪われているんじゃないかって父さんは推理したの。魂の力を願いで削られているからこそ、あんな小さな塊になっているし、キュウべえにも管理できるともパパは言ってた」

「ねぇ? もし何の願いも叶えずに魂に秘められた力を取り出そうとしたらどうなると思う? しかも、ほかの世界の因果を全て背負った私だったら?」

「ま、まさか、まどか! 君は最初からこうなるつもりでボクに接触を!」

 感情を持たないはずのキュウべえが狼狽しきっていた。

「危ない賭けだったわ。あなたが無理矢理私の魂に干渉しようとしなければ、この作戦は使えなかった。でも、私は信じた、あなたの執念と悪意を。そしてみんなの力を私は信じた。そしてあなたに敗北しかけた私達を、マミさんが命を賭けて救ってくれた」

 涙が自然とまどかの頬を伝う。その涙が光を発し、まどかの体から光が漏れ出していく。徐々にその光はまぶしさを増していき、キュウべえの触手が光に照らされた闇のように消えていく。

「今、私は世界の全てが見えるわ。あなたたちの歴史も嘘も。そして私はあなたを・・・」

 キュウべえはふるえた。今自分の目の前にいる存在は、キュウべえたちの一族が触れてはいけないとされるものだった。それの名前は告げられてはいない。それの名前を口にすることすら禁じられていたからだった。

「でも、私はあなたたちの一族の名前を知っている」

 まどかがキュウべえの思考を読んで語りかけた。

「そう、あなたたちは”悪魔”。人類に干渉してまやかしの知恵を授け、エデンの園から私たちを放逐した蛇の一族!」

「まどか、貴様は一体何者だ!」

 まどかの顔に縦に亀裂が走り、光がキュウべえの目を焼いた。その亀裂は体まで広がり、中から生まれたままの姿のまどかが現れた。

「私は、少女を越え、魔女をも越えた魔女、そう、私は女禍! 魔女を超えた魔女、魔女禍」

 世界を創世したと伝えられる伝説の存在、”女禍”。それはキュウべえたち悪魔の仇敵である神の一族もであった。
 
 まどか、いや魔女禍の放った光がキュウべえの体を焼き付くした。後には何一つ残らなかった。
 
 この戦いの一部始終を見届けていたほむらたちが駆け寄ってきた。

「ま、まどか。あなたは一体・・・」

「ほむらちゃん、わたしはまどかだよ。この目も、この顔も、この体も、私は鹿目まどかだよ!」

 まどかは答えた。
 

「主任観測官! これは一体!」

 若い観測官が先輩に必死に尋ねた。

「わからない、わからないんだ。スーパーセルが全て消えうせるなんてありえない! それだけじゃない。見滝原港近辺で起きた謎の発光現象も。あの瞬間のエネルギーは、発光温度計測からしても、核兵器どころじゃあなかったぞ!」

 主任観測官も半ば悲鳴を上げていた。だが――。

「かつて、旧約聖書に記されていた邪悪と退廃の都、ソドムとゴモラを焼き尽くした光も、もしかしたらあんな光りをしていたのかもしれないな」

 主任観測官は自分が見当違いの言葉を述べた事に気付いて、咳ばらいをした。

「おかあさん、ほむらちゃん、さやかちゃん、杏子ちゃん、私、帰ってきたよ。みんなのもとに。もう私、怖くない、もう何も怖くない」

 そう言い放ったまどかの声は、彼女たちを救おうと命をかけた少女と、同じ声をしていた。

 しかし、その事実を彼女たちは受け入れていた。