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00まどか 見滝原幼年期の終わりに

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 ワルプルギスの闇が次第に広がっていく様は、市民の心を絶望で支配しようとしていた。だが、それに対して市民は懸命に抵抗しようとしていた。

 
 「僕はずっと僕を思ってくれたあの子が命を賭けているのに、何も出来なかった。こんな僕が生きていていいはずがない!」

 
 少年が閃光に包まれたさやかを見たことで、絶望の叫びを上げた。


 「しっかりして!_あの子は私達に未来を呉れたのよ!_私達はあの子の犠牲の上に幸せをつかもうとしているのかもしれない!_でも、それでも生きて明日を掴まなくちゃいけないのよ!_」


 「生き続けなくちゃいけないのか、未来を切り開くために。そしてさやかのために」

 
 傷跡が深く残る手を見つめながら少年は呟いた。この手は「奇跡も魔法もあるんだよ」とささやいた少女が起こした奇跡によるものだと少年は理解していた。


 「いや、違う。いけないとかじゃあない!_信じるんだ、未来を、明日を!」






 「その通り!_あの子達は魔法少女だったんだ!」

 後輩のホストがショウさんと呼ぶ先輩のホストに向かって叫んだ 


 「俺たちの町を救おうとしているあの子に俺たちは殺されかけたけどな。どっから出したのかもわからない刀をこちらに向けたとき、おれマジ死を覚悟したぜ」


  皮肉っぽくショウさんは返した。


 「でも、途中であの子はその過ちに気が付いた。あの子が俺たちを殺そうとした時、あのこの携帯が鳴った。その後だ、赤い髪の魔法少女とその友達の子が現れたのは。そして俺たちに泣いて謝った。だから、ショウさん」


 後輩のホストはごめんなさい、私正義の味方のつもりだったのに、と泣きながら謝っていた少女の顔を思い出しながらショウさんに熱く語った。


 「ああ、ああ、わかったよ。たしかにあの子達が俺達の街を守って戦っているのは事実だよな」


 



 「最後の最後まで諦めるな!」


 町工場の工場主がテレビに向かって叫んでいた。彼も景気の悪さゆえ、一度は自殺を考えたが、彼女達魔法少女のおかげでその自殺の衝動から救われた。自殺の前後の記憶は彼には残ってはいなかったが、彼の頭の中には、おぼろげな彼女たちの姿が残ってイのだろう。

 年端もいかない少女達が命がけで戦う姿を見て工場主は必死で応援していた。命を救われたその日以来、憑き物が落ちた工場主は経営を立て直すために工場の清掃と準備を毎日行った。遠のいた客や注文が確実に来るという保障はどこにもない。だが、彼は明日を信じて経営再建の努力を続けた。経営が傾いてから工場の清掃は手を抜き続けたが、自分の未来の為に工場主は工場の中を仕事がしやすいように手入れをし続けた。明日を信じるために。


 
 
 魔法少女がかつては魔法少女だった魔女と戦い続けなければならない呪われた宿命を背負っていたとしても、彼女たちによって救われた人々は確実に存在していた。

 そして彼女たちが彼らの未来を、可能性を作ったのだ。

 

 「ここがワルプルギスの夜の中心…」


 ほむらですらたどり着かなかったワルプルギスの夜の中心にたどり着いたほむらは、感慨深げに呟いた。


 ほむらの今までのループのルートではここまでたどり着くことは叶わなかった。それを可能にしたのは――。


 「ようこそ、よくここまでたどり着けたね。これは皮肉ではなく純粋な賞賛だよ。しかしほむら、君の願いはワルプルギスの夜を倒すことじゃあなかったのかい?」


 聞きなれた声が辺りに響いた。だが姿は見えない。彼にとってあの姿は仮の姿に過ぎないのだろう。


 「悪いけど宗旨替えをしてね」


 隣の杏子を見ながらほむらは応えた。 

 
 「今までの私だったら、私はあなたの言うとおり、私の障害を『倒す』ことしか頭になかったの。でも、あるきっかけをつかんで、私は気付けたの」


 杏子がほむらに続く。

 
 「さやかが魔法少女の力をホストたちに向けようとした晩、まどかからほむらに電話があってね。私とほむらが別れた直後だ」


 「私はまどかの言葉に耳を貸すつもりはなかったの。でも泣きながらさやかを助けて欲しいと懇願しつづけるまどかを無視できるほど私は強くなかった。あの時のまどかは本当に強情だった」

 
 「それでまどかに私の携帯番号を教えたんだろ」


 「それだけじゃないわ。あの子は自分だけではさやかを見つけられないことを良くわかってた。自分ひとりの力は無力だと」

 「まさかおとなしいあいつが、親や学校にさやかの捜索願いを出すとは思わなかったよ」


 「そこまでされたら私も動くしかなかったわ」
 
 
 「さやかの両親の携帯電話まで借りてGPSで居場所をつかんだから何とか間に合ったけど、あん時は焦ったー」


 「クラスメートでもないあなたが、世間体を気にしてさやかの捜索に乗り気でなかった両親に切れた時が私は一番焦ったわ」


 「だってよー、親だったら娘の心配をするのは当たり前じゃん!_それをさやかの両親は世間体ばっかり気にしやがって」
 

 「さやかの魔女化が延びたのは、そういうことだったんだね。今までの魔法少女たちにはそんな事例がなかったから僕も正直驚いたよ」


  キュウべえが素直に彼らの健闘を称えた。


 「でも、最終的にあいつの魔女化は止められなかった。そしてあいつは今もこのワルプルギスの夜を抑え続けてくれている」

 
 「だったら僕とこんな無駄話をしている暇はないんじゃないかい。そもそも君たちは僕に何を求めるというんだい。僕は君たちの願いをかなえた。そして君たちは代償を払う。ただそれだけだ」


 「本当にそれだけならね。キュウべえ。私たちはあなたと対話するために来たのだから」


 「対話?_僕が君たちと何を対話するって言うんだい?_時を越えてきた君ならば知っているだろう。僕たちは宇宙のエネルギーを維持するために――」


 「あんたは私たちとは違う次元の生き物だ。あんたは言葉を使って私たちに『わかりやすく』話しかけてくれる。でも『わかりやすく』ってのが曲者だ」


 「父さんが言ってたよ、本当に大事なことは理解するのがとても難しいって。そしてそれを伝えるために『わかりやすく』してしまいがちだって。でも、いくら『わかりやすく』しても、受け手がそれを捻じ曲げたり、伝え手がそれを『わかりやすく』するためにはしょってしまえば、真実はにごってしまう。ちょうどソウルジェムのように――」

 あたりを沈黙が支配した。ワルプルギスの夜の結界の中では今もさやかは戦い続けている。その衝撃は伝わっていた。だが、魔法少女とキュウべえの空間はまるで別の世界のように、音がないように聞こえた。それはキュウべえにとってもだった。



 「………僕がしゃべろうとして、間を挟んだのはこの個体の形をとってから初めてのことだよ」

 
 「私も偉そうなこと言えないよ、父さんが言ってたことを思い出したのはつい最近だもん」