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00まどか 見滝原幼年期の終わりに

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 「キュウべえ、本当はあなたたちの星も危機が迫っているんじゃないの?_宇宙の危機というけれど、それはあなた達自身も含めた話――しかも間近に控えた危機じゃないの?」



 「………やれやれ、今の君たちには僕は本当に驚かされっぱなしだ。何が君たちをそこまで変えたんだい」


  おどけた調子で語るキュウべえに、いつもの余裕じみた態度は見えなかった。感情を排除したはずのキュウべえがここまで詰まる姿は、何度も時を越えてきたほむらですら見たことがなかった。


 「キュウべえ、提案があるんだ。嫌な言い方になるけど、これはあんたにとってもそんな話じゃない」


 「君たちが僕に提案?_願いじゃなくって?」



 「ええ、そうよ。はっきり言うわ。私たちにあなたのすべてを見せて。そして私たちにそれを理解させて」



 「………!」

 
 今までの中で一番長い沈黙だった。いや、沈黙していたのはキュウべえだけで、魔法少女たちはキュウべえが言葉を切り出すのを静かに待っていた。感情を持たないキュウべえが絶句までしたのは、その提案が今までにキュウべえが見てきた魔法少女たちのどれにも当てはまらないものだったからだ 


 「ほむら、僕は君をイレギュラーだといったね。僕は君の存在だけがイレギュラーだと思っていたけれど、どうやら君の考え方や杏子の考え方までもがイレギュラーだったようだ。どうしてだい?_どうして僕のことを知ろうとする?_僕のことを知って君たちに得があるというのかい?_君たちは僕に願い事をする。僕はそれをかなえる代わりに代償をもらう。僕と君たちの関係はそれだけだろう――。いつも言ってたことだけど、僕は君たちが理解できないよ」


 「理解は出来なくても、分かり合おうとすることは出来る。まどかの母さんがそう言っててね」


 ほむらが応えた。


 
 「さやかの暴走を止めた日、まどかが私たちを誘って、家に来るように言ったんだ。さやかの両親にはきちんと事情を説明してね。」


 
 「まどかの母さんって、優しくて立派な母さんだったな。私の母さんもあんな母さんだったら、父さんも思いつめることはなかったと思ったよ。そしてあんなお母さんがいたから、まどかはまっすぐに育ち、私たちもあの子に惹かれていったんだとわかったよ」



 「まどかはまどかの母さんにすべての事情を打ち明けた。私たちの正体も含めてね。そうしたら、お母さんは泣いて私たちを抱きしめてくれた。私たちは他人なのに」 


 ほむらは一人きりで戦っていた孤独と絶望で糸が切れる寸前だった。そのため、まどかの母にすべてを語った時、我知らず嗚咽していた。その様子はとても激しく、時折せき込むほどだった。


 
 「だけどまどかの母さんは私たちのとっぴな話を朝までずっと聞いてくれた。信じてくれた。ただそれだけで私たちは救われたんだ」


 杏子が父の形見と一体化した胸のソウルジェムをいじりながら言った。



 「そして私たちは決めたんだ。こんなすばらしい人たちがいる見滝原という町を守りたいって」


 「あん時、うつ状態だったさやかがすっかり元気になって『魔法少女隊結成ね!』って言ったっけな。あんたもすっかりノリノリで『リーダーは私よ』って言ってたな」


 「そ、それは私の能力が時間停止だから、後ろに控えていようと。ほら、さやかたちに私の爆弾や武器が当たるといけないから、それを配慮して」


 「その魔法少女隊の結成式をマミの部屋で行うといったのはまどかだったな」


 「ええ、あそこでマミさんの研究ノートを見つけていなければ、私たちもここまでは来れなかった」


 「でもあの内容、あいつ相当アニメが好きだったんだな。言われてみればあのマスケット銃がたくさん並ぶ風景、どこかで見覚えがあったもんな」 


 「ええ、私たちはお互いのことを知っているつもりだった。でも、お互いに知らないことばかりだった。マミさんとはもう会うことが出来ないけど、私たちは知り合って分かり合うことが出来た。だからキュウべえ――」


 ほむらは意図的に言葉を切った。 


 「私たちにもあなたのことを教えて。そしてわかり合わせて」



 「君たちが僕たちの星のことを知ってどうするというんだい?_君たちが僕たちに何かできるというのかい?」


 キュウべえは冷たく切り離した。その様子をほむらは何度も見たことがあった。自分のことに執着し、他の人の意見をまるで聞こうとしない――そう、さやかやほむら、マミだった。


 私たちは自分の思いに囚われすぎていたから、だから、人を、思いを排除しようとした。



 マミはまどかと二人きりの時間を邪魔されてほむらを拘束した。さやかはかなわない上條君の思いと、まま鳴らない自分の正義との狭間で堕ちようとしていた。

 
 そして私は――。



 「だったら、キュウべえ、私たちがあなたたちの星に行くわ。そしてそこであなたたちの危機を理解する、分かり合ってみせる!」




 ほむらの突然のキュウべえたちへの協力に鼻白んだのか、キュウべえは感情を込めて否定した。

 「どうやって僕たちの星まで行くためのエネルギーを出すというんだい。その力はどこにあるというんだい?_僕は分子間配列があやふやな単なる端末に過ぎないから星に帰ることは造作もないけど、君たちはどうするんだい?_もう君たちの願いはかなえたあとだよ」


 「エネルギーならあるだろう? あんたの外にでっかいのが」


 キュウべえは赤い目を震わせて言った。



 「確かに、このワルプルギスの夜は巨大なエネルギー体と呼べるだろう。だが、どうやってこれを制御する?_第一暴れ狂うこの魔女を今はさやかが食い止めているに過ぎない。そもそもこの魔女は――」



 すべての真相を知っていながら、真実に到達できなかったキュウべえはこの魔女が何者であったのかを思い出した。



 「そうか――この魔女は、君の未来の――。エントロピーを凌駕したものならば、それを超えたものは」




 「そうよ、私がこの魔女は元々私自身。だから私はこの魔女の力を使うことが出来る」



 「だ、だけど、それがもし可能だったとしても、それを行うには君は魔女と一体化することを意味する。魔女と魔法少女が一体化すれば確かに恐ろしいエネルギーを、しかもエントロピーを凌駕したもの同士だからそのエネルギーの結合は原子崩壊を超えた、クォークのレベルさえも――」



 「難しい話はそこまでにしようぜ。さやかも余り時間がない」


 杏子はキュウべえの言葉をさえぎった。


 「時間を完全に制御することが可能になれば、重力と光の関係に近づき、その者は恒星間移動すらも可能になる」

 「でも、君が魔女と一体化すればその力に飲み込まれ黄身の意識など」


 「だからキュウべえ、あなたに私の力の制御を頼むのよ。今まで散々あなたを殺してきた私が頼むなんて、ムシが良すぎるけどね。そして杏子をあなたの星に届けてあげて」


 「…君たちはそれで満足なのかい?」