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continuous phase

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innocence・聖川



聖川はピアノに向かっていた。
この部屋が防音で本当に助かる。
時間に関係なく、周囲に気兼ねなく弾く事が出来る。
今はどうしても目の前の楽譜に向かいたくて仕方がなかった。
その衝動を止められなかった。

彼の目の前にある楽譜は、今日事務所から渡されたものだった。

「十日後にこの曲を収録するから準備しておいて」

その言葉とともに、楽譜と歌詞用紙、そして音源CDROM。
部屋に戻って早速楽譜を読む。
伝わる静かなる情熱が胸に響いた。

(ハル…やはりお前は素晴らしい作曲家だ…)

作曲したのは七海春歌だと告げられていた。

「この歌詞、素晴らしいですね。何というか…とても大人しく切ないですが、でもとても情熱的な人だ。
 作詞家は誰ですか?」
「それは、企業秘密だ」
「は、はぁ…」

事務所も企業だが、その企業にいる自分に対しても「秘密」と言う事は余程の事なのだろうと聖川は考える。

「きっと書いた人間自体がそれを求めたのかもしれない」

という思いも浮かんでくる。
何にせよ誰であれ、曲も歌詞も素晴らしい、と聖川は感じている。
「完成形」の一つである楽曲を聴き、

「一ノ瀬は、素晴らしい歌い手だな…」

と感心もしてしまった。
彼なりに作り上げた世界。
これが一つの答えなのだ。

自分に出来る事はこの先へ到達する事。
何も同じ方法でなくても良いのだ。

(俺は、俺のやり方で行く。事務所からの、一ノ瀬からの挑戦状、しっかり受け取ったぞ)

体中がいとおしい音楽であふれる。
そこに、ライバルからの宣戦布告。
これは受けなければなるまい、と聖川は心を決めていた。

「証明しよう、ハル。未来の為、この歌詞に居る”俺”は現実に居るお前とこの歌詞に居る”君”に、歌声で口づけよう」

鍵盤に指を置き、再び楽譜から紡ぎだされる愛をささやきたい対象に対して何度も何度も想いを刻み込んでいった。


作品名:continuous phase 作家名:くぼくろ