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【かいねこ】海鳴り

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龍神子様の元へ行くと、ミクが出てきた。
手紙を渡すと、しばらく逡巡していたが、何も言わずに戻っていく。
ミクが伝えたかったことが何なのか、未だ心に引っかかっていたが、俺にはどうすることも出来なかった。
そこらでぶらぶらと時を潰す訳にもいかず、聞きたいこともあるので、主人の家へと向かう。
家に着くと、主人に出迎えられた。子供達は遊びに行っており、奥方様も出掛けているという。
主人と久しぶりに差し向かいで座ると、

「どうだ。変わりはないか」
「はい」
「伏木には、気の毒なことだったな」

伏木様の名前を出され、ぎくりと身を堅くした。
主人は気づいた様子もなく、「やつれていく様を見るのが辛い」とこぼす。

「あれは人一倍情の深い男だからな。人手に渡すと、いつも三日は寝込み、一月は飯も喉を通らぬほど気落ちするのだ。体が幾つあっても足りないだろう」
「・・・・・・お優しい方なのですね」
「そうだな。望まれて迎えられる人形ですらそうなのだから、龍神子様の命とは言え、差し出さねばならぬ辛さは、筆舌に尽くしがたいものがあるだろう。祭りまで奴の命が持つか、心配になるほどだ」

溜息をつく主人に、思い切って自分の疑問をぶつけた。

「それほどの思いをしてなお、人形遣いである理由とは何なのでしょう?他の道を選ぶ術はなかったのでしょうか」

俺の問いかけに、主人は顔を強ばらせ、

「・・・・・・他の道などない。人形遣いになるしか、生きる術がなかったのだ」

息を吐くと、淡々と語り出す。

人形遣いになる者は、殆どが貧しい家の生まれで、口減らしに、生まれてすぐ売られたのだという。

「俺は、生みの親を知らぬ。皆も同じだ。生まれてすぐ売られ、人形達に育てられた。禁忌に触れる道に、望んで飛び込む者などいない。だから、金で赤子を集め、己の技を継がせるのよ。向き不向きなど関係ない。一度人形遣いに売られれば、烙印は一生ついて回る。他の道など、生まれた時から閉ざされているのだ。生きる為には人形を作り、売らねばならぬ」

主人は目を伏せ、「子供らには、気の毒なことだが」と呟いた。

「所帯を持つつもりはなかったのだがな・・・・・・この村に来て、人として扱われる内に、勘違いしたのかも知れぬ。俺にも、人並みの暮らしが出来るのではないかと。お前に聞かれるまで、忘れておったわ」
「そんな・・・・・・申し訳ございません!」

手をついて頭を下げると、主人は笑って、

「良い。お前には、きちんと話しておくべきであったな。事情を知らねば、不審を抱いても仕方のないことよ」

一旦言葉を切り、ふーっと息を吐いた。

「龍神子様がどんな命を下そうと、この村にしがみつくしかないのだ。此処以外に、我らの居場所はない。分かってくれ」


作品名:【かいねこ】海鳴り 作家名:シャオ