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【かいねこ】海鳴り

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「龍神子様、カイトを連れて参りました」

御簾の向こうに、メイコが声を掛けた。

「ご苦労であった。下がって良いぞ」
「ですが」
「良い。この者と二人で話がしたいのだ。下がれ」
「はい」

メイコにじろりと睨まれて、こちらの身が竦む。
側仕えの人形達は全て下がらせたらしく、俺は御簾を挟んで、龍神子様と二人きりになった。
何と切り出すか迷ったが、余計な小細工は不要と腹を決める。

「龍神子様、私は禁を破り、いろは様に触れました」

次の瞬間、鈴を震わせたような笑い声が響いた。
不意を打たれてぎょっとしたが、龍神子様は上機嫌な声で、

「お主は弱いな。あの子なら、眉一つ動かさず、偽りを貫き通すであろうに」
「龍神子様を欺くことは出来ません」

混乱しながらも、何とか答える。

「お主は、何故守役を置くか知っているか?」
「えっ、あっ」
「どれほど禁じようと、男と女を一つ屋根の下に置けば、間違いが起こるは当然であろう」

龍神子様の言葉に、疑念が沸いた。


分かっていて、守役を置いたのか?
だが、何故?


「禁を破ったのは、お主が初めてだがな」

再び、鈴の音のような笑い声が響く。

「愛する女を失うよりも、禁を犯すほうが、余程恐ろしいとみえる」
「何故っ、何故守役を置くのでしょうか。そもそも、生贄は必要なのでしょうか。私は」
「何故、か。問うたのも、お主が初めてだな」

衣擦れの音が聞こえ、御簾が揺らめく。
僅かに持ち上げられた隙間から、火のように赤い瞳が覗いた。

「妾の封を解く為よ」

真っ白な髪に、切れ長の赤い目。肌の色も髪に負けぬほど白く、およそ命ある者とは思えぬほどだった。
息を呑み、声も出せずにいたら、すぐに御簾が下ろされる。

「あれは強い子だ」

衣擦れの音とともに、龍神子様の声が響いた。

「神殺しの汚名を着ようと、この馬鹿げた因習を終わらせる覚悟よ。急がねば、お主の愛しい女が死ぬぞ?」

その言葉に、驚いて外を見れば、すでに日が傾き始めている。
ちらちらと見える松明は、祭りがもうすぐ始まることを示していた。

「えっ!?なっ!」
「急ぎ、屋敷へ戻れ。納戸の奥に刀が納めてある。海岸に出たら、洞窟の裏へ回るが良い。人一人通る隙間がある」

龍神子様は一息に言うと、急に懇願する口調で、

「さあ、行け。行って、お前の愛しい女を助けるのだ。これ以上の犠牲を出さぬ為に」



作品名:【かいねこ】海鳴り 作家名:シャオ