海賊と軍部
・星史郎君と神威・
やなやつに会った。
神威は黒い軍服を纏ったその姿をみつけて舌打ちをした。
しかもまだ5メートルほど距離があるというのに血臭がする。
「浴びないように戦えるくせに」
認めたくはないけど、星史郎はそのスピードと剣技は昴流に匹敵するはずだ。
躊躇いのなさなら星史郎の方が上だと思うが。
だから昴流のように軍服を汚さず立ち回ることもできるだろうに、何故か毎回血まみれになる。
「むかつく」
「珍しく気が合うね。僕もだ」
聞こえるように言ったけれど、まさか返してくるとは思わなかった。
いつものように嘲笑だけよこすと思ったのだけど、よっぽど気にさわることがあったのだろう。
ぴりぴりとした空気を隠しもせず近づいてくる。
「相変わらず小さいから吠えてくれなきゃぶつかるところだった」
「…相変わらず性格悪いな。それまであいつに似てるなんてある意味すごいよな」
星史郎の一番嫌う人間を暗に出すと星史郎の殺気がぶわりと広がった。
あいつ絡みで機嫌が悪かったのか…。
けれど今更気付いても遅い。
引くのも悔しくにらみつける。
星史郎は笑みらしいものを浮かべているけれどその目は笑っていない。
「わざとらしく血を浴びてるのは昴流より下だって思われるためか?わざわざ下につきたいなんてマゾかよ」
「きゃんきゃんうるさいですね」
「てめぇさっきから好き勝手いいやがってっ!!」
掴みかかろうとした途端、目の前のドアが開いた。
そこから出てきたのは、神威の上官でもある昴流だった。
肩から軍服を羽織り、包帯を巻いたその姿にどうしたのかつめよろうとしたら、昴流はにっこり微笑む。
「仲良しだね」
がくりと自分の身体から力の抜ける音が聞こえた気がした。
毒気を抜かれたのか星史郎も複雑そうな表情をしていた。