それは永遠に秘密です。〈それはあなたの忘れ物。UP!〉
その彼は周りの人とは違い、一際目立って見えた。
仮面を被ってゼルと話している彼の金色の髪は、とても長くひとつで束ねられていた。
そのすらりと高い身長に、あたしは目を奪われた。
あたしはその人を見て、まるで雷に打たれたように、ただただ立ち尽くしたわ。
なぜか不思議なくらいに、彼とまるで心がつながっているように思えた。
彼は前世からの恋人に間違いないと心の中で確信したわ。
おかしいでしょう?
彼の後ろ姿を見るだけで、そう確信するあたしの心が狂っているのかさえ思ったわ。
でも、恋とはこういうものなのかもしれないと思った。
彼のことを見ていたあたしに気がついたゼルとその彼はあたしに近づいてきた。
あたしの心はもうそれは爆発寸前・・・。
ただただ、頬を赤くして、まともに顔を上げることもできなかったわ。
そんなあたしに、その彼は恭しく挨拶をし、ゼルはあたしに「踊れば?」と勧めた。
その日あたしたちは名前は名乗らなかった。
その仮面パーティの趣旨に従って、お互い他人でありながら・・・
でも、パートナーはこの長い金髪の彼と決めた。
あたしは、仮面で顔の見えない相手にすっかり夢中になっていた。
でもね、一緒に踊るダンスの中で、時々ちらりと見える瞳が透けるような空色をしていたの。
なぜ、恋に落ちたかわからない。
彼の雰囲気?
優しげな瞳?
それとも彼の仕草?
彼のことをあれこれと考えてみたが、彼しか見えなくなった理由について答えは出てこなかった。
その日のダンスはもう彼以外とは踊らなかった。
それはもう、二人だけの世界だったのよ。
それから、あたしは彼と次に会う約束をしたのだった。
そこからあたしたちの交際は始まったのよ。
彼の名前はガウリイ=ガブリエルといった。
仮面をつけていない彼は本当にかっこよかったわ。
金髪をなびかせ、青い瞳で見つめられると心臓が高鳴った。
彼はまるで異国の王子様のようだった。
それから間もなく、彼が隣町の有名な有力な商家の跡取り息子だということがわかった。
あたしたちはまだ誰にも恋人同士と打ち明けていなかった。
昔だもの。
あたしと彼は人目を凌いで、デートしたものだわ。
何度も何度も。
作品名:それは永遠に秘密です。〈それはあなたの忘れ物。UP!〉 作家名:ワルス虎