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彼氏の言い分、振り回され王選手権

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「……さくまさんは人がいいので他人を助けたりもしますが、危険なことに無謀にも突っこんでいくタイプではありませんね」
ベルゼブブが佐隈りん子について話し始めた。
「さくまさんはリアリストのようです。特に金銭面において、そうだと感じます」
過去にあったことを思い出しつつ、ベルゼブブは説明する。
「たとえば、私がさくまさんに喜んでもらおうと思って、魔界の我が城の庭に咲いていた薔薇を花束にして人間界に持って行ったら、さくまさんは眼を輝かせ、その花束をだれかに売れないかと言いだし、花束を換金しようとしたことがあります」
「「「「……へえ」」」」
「他にも、仕事ではなくデートだと言われて胸を躍らせつつ一緒に出かけたら、つれていかれた先はスーパーマーケットのオープニングセールでした。そして、お一人様一個限りのティッシュやラップなどの特売品を買うよう指示されました」
庶民的なスーパーにいたら浮きそうなほど高貴な雰囲気を持つベルゼブブは、さらに続ける。
「お札を数えるときは手際がいいですし、まあ、経済観念がしっかりしているということなのでしょうか……」
そう言うと、ベルゼブブは遠い眼をした。
他の四人は反応に困り、無言でいる。
少しして、気を取り直したように、雪男が口を開いた。
「僕は、シュラさんがお酒を飲みすぎるのに困っています」
反応に困ったので話題を変えることにした。
「本当にたくさん飲むんです。林間合宿で夜だったとはいえ、勤務中にも飲んで、そのうえ寝てしまって……」
雪男はいろいろと思い出して表情を暗くする。
「それに、部屋でふたりっきりになったのに、お酒を飲んだせいでシュラさんは寝てしまって、気持ち良さそうに眠っているシュラさんのそばで、僕はなにもできずに、ただそこにいる状態になることもあります」
疲れ切ったサラリーマンのように、ハァ……と雪男はため息をついた。
しかし。
「酒に酔って寝るぐらいなら、可愛いものではないですか」
ベルゼブブが言う。
「さくまさんは酒癖が非常に悪いです。酔っぱらうと、からんできます」
ふだんの佐隈はおとなしいほうなのに、酒が入ると性格が変わってしまうのだ。
「それだけではありません。夜中に家で一人酒をして酔っぱらった挙げ句、私を召喚し、歌え踊れと命令したり、私のプリチーボディにセクハラしてきたりするんです」
彼女が酒飲み対決では、どうやらベルゼブブに軍配があがりそうである。
けれども。
「セクハラぐらいなら、それこそ可愛いモンじゃねぇか」
ケッとギルベルトが笑う。
「エリザはな、昔は自分のことを男だと思いこんでいて、その頃は遊牧民族として戦ってたんだ」
ギルベルトはその当時のことを思い出す。
あの頃、自分もエリザを男だと思いこんでいた……。
「今では男と間違うことなんかありえねぇぐらい女らしくなってるが、気性はやっぱりあの頃のままで、怒るとフライパンで俺をボコボコにするんだぜ」
男だと思いこんでいたからこそ、エリザから最近すごく胸が痛いと相談されたときに、弱点発見と思って、エリザの胸をさわってしまったのだ。
そして、エリザが実は女であると気づいたのだが、機会を逃して、その事実をエリザに告げることができなかった。
そのあと、根が真面目なギルベルトはひとりで悩み、今でも負い目を感じている。