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彼氏の言い分、振り回され王選手権

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「さくまさんは、そんなことはありませんよ」
ベルゼブブが得意気な顔をして言う。
「さくまさんの作るカレーライスは世界一おいしいんです」
「蝮も料理は得意やぞ。よォうちの家に、おすそわけやって言うて、手料理を持ってきてくれるわ」
柔造も胸を張って彼女自慢をした。
そこに、ギルベルトも加わる。
「俺様のエリザは料理だけじゃなくて家事全般が得意なんだぜ。なにしろ、お坊ちゃんの屋敷の使用人をしていたからな。まあ、そのせいで、味付けがお坊ちゃん好みなのが気に入らねーんだけどな」
ニヨニヨ笑っているが、その自慢には若干の不憫さが漂っていた。
そのあと、三人とアマイモンの視線が雪男へと向けられた。
視線が集中しているのを感じ、雪男は緊張の面持ちになる。
「……えー、シュラさんは、えー」
「なんとなくわかったから、無理に答えんでええで」
「いえ、あの、その、そういうことじゃなくて、シュラさんの好物が居酒屋メニュー全般で、外食が多いんです」
「せやけど、外食ばっかりってことはないやろ?」
「ええ、まあ、それはそうなんですが……」
雪男は眼を伏せた。
「もしかして、過去になんかあったんか?」
そう柔造が鋭く追求した。
直後、アマイモンが言う。
「あ、今、背後にギクッという効果音が見えました」
動揺が外にハッキリ出ていたらしい。
「……僕の双子の兄がプロの料理人になれるんじゃないかってぐらいに料理が得意で」
「なるほど」
ベルゼブブがにやりと笑った。
「彼女の作った物と比べたんですね?」
「……はい」
「そら、アカンわ」
柔造はあきれた顔をして、ため息をついた。
「向こう、キレたやろ?」
「キレたというか……、思いっきり笑顔で、もう二度と作らないと宣言されました」
「ああ、それ、めっちゃ恐い笑顔やな」
「はい……」
消え入りそうな声で雪男は返事をした。
それを眺め、ギルベルトはケセセセセと愉快そうに笑う。
「おまえ、本当に彼女の尻に敷かれてるな!」
それはオマエもだろ、と雪男以外の三人は思いつつ、しかし、それは自分にも返ってきそうなので、言わずにおいた。
雪男はテーブルに肘をつき、頭を抱える。
「僕はシュラさんよりずっと年下で、しかも、あのひとは僕の直属の上司なんです! 僕は常にあのひとより下なんです!」
「えーと、なんか、えらい悩んどるみたいやな……?」
「現状、かなり差をつけられてるんです。僕の階級は中一級なのに対して、シュラさんは上一級。しかも、シュラさんの取得称号は、騎士と手騎士と医工騎士と詠唱騎士ですよ!? なんで、あのひとは、あんなにハイスペックなんだ!? いつか聖騎士になるつもりなのか!? そして、いつまでも僕の上に君臨し続けるのか……!?」
苦悩する雪男をまえにして、残りの四人は言葉をかけられずにいた。



さて、振り回され王の称号はだれのものに!?