丘
ん〜、これはホント気分いいぞ。なんかガウリイがジト目しているけどそこは無視。
「さ、ガウリイこれで心置きなく昼寝できるわね」
「おい、リナあのなぁ〜」
「ま、いいからいいから。おやすみさな〜い」
木の根にゴロンとなる。これは思った以上に気持ちいい。今まで馬鹿な二人を相手していたことを忘れるぐらい・・・zzz
「〜〜〜」
ん〜〜?なんだ、だれか私を揺さぶっている。
「リナ様、起きてください。そろそろ夕方でございます」
ん??リナ様・・・誰だろう、この子?・・・
やっと頭が覚醒してきた。
「おはよう、クリスだっけ?」
「ぐぅ〜ぐぅ〜!」
「はい、リナ様が予定されておりました。夕時に近づきましたので失礼ながら起こさせて頂きました」
これは寝る前は気分いい〜と思っていたけど、なかなかこそばゆいなぁ。
「あれ?ジョンだっけ?彼は?」
「ぐぅ〜ぐぅ〜!」
「あ、ジョンなら木の上で見張りをしております」
見上げると、木の上に人影が見えた。木登りが得意なのだろうか、かなり上のほうまで上っている。
「さてと、それじゃあ行きましょうか。ほら、ガウリイ行くよ」
バシッとガウリイの頭を叩く。
「ん?ああリナ。飯か?」
全く、この男は平和である。だがしかし、その意見はわりかし的を射ている。
「そういえば、お昼から何も食べてないわね」
とたんにぐぅ〜とお腹がなる。
「でしたら、よろしければ私がリナ様達にお料理を振る回させて頂きます」
「え?そう、ありがとう」
ラッキ〜。食事代が浮いた♪
「ジョン〜!村に戻るわよ〜」
クリスが木の上のジョンに声をかけた。すると
「分かった〜、今行く〜」
というが早いか、猿か?と思うスピードで木を降りてきた。
「お前、サルみたいだなぁ」
「え、ああ。どうしてでしょうね、昔からこの木でよく遊んでいたのかもしれまんせんね、それで木登りとか得意なんですよ」
えへへと笑っている。そういえば彼の笑顔は始めてみた。
「じゃ、行きましょうか?で、あなたの言う村はどこにあるの?」
「はい、ここから歩いて15分ぐらいの所にございます」
「15分か丁度いい距離ね、じゃあ行きましょ」
少し歩くと、彼らが前方でヒソヒソ話している。
「クリス、なんでリナ様がうちの街に来るんだ?」
「先ほど、お腹がすいたと言っていたからよ?」
「大丈夫かなぁ」
「何が?」
「だって、あのリナ=インバースだぞ?もし街に着いたらうちらの街を腹いせとか言って滅ぼされちゃうんじゃ?」
「ジョン。それならそれでいいでしょ?私たちはなぜ自殺するか忘れたの?この街での迫害に耐えられなかったからでしょ?
いっその事こんな街滅んでしまえばいいのよ」
「そっか。クリスが言うなら、そうだよな」
きっと私の悪口でも言ってるんだろう。まぁただ飯食べられるから、許してやるか。
なんて思っているとガウリイが
「なぁリナ、それでこれからどうするんだ?まさか本当に殺しはしないだろ?」
「あんたねぇ。私と何年旅しているのよ、殺すはずないでしょうが!」
「だよなぁ。でもペチャパイと事実を言った時はホントにジョン死んだと思ったけど」
あ・・・思い出した、そうだアイツはそんな事を言っていやがったっけ後で、キツイお灸を据えてやろうっと。
ただ、その前に〜〜〜
ドカッ
「あんたも、何言っているのよ。ん〜?ガウリイ?何が事実なのかなぁ?う〜ん??」
「まて、リナ悪かった。だからナイフはしまえ。なっなっ」
全く、男というのはデリカシーの欠片もない。
気がつくと、ジョンがくるっと前を向いた、どうやら私の様子を見ていたみたいだ。
「クリス、やっぱりリナ様は怖いな」
「何よ、あらためて?」
「いや、さっきチラッと見たら。金髪の兄ちゃん、ガウリイだっけ?殴ってナイフで脅していた。
もしかして、彼も俺たちと一緒の被害者なのかな?死ぬまで奴隷とか・・・俺嫌だよ。そんな一生」
「大丈夫よジョン。いい手があるわ。料理に毒を入れるのよ」
「クリス、知らないのかい?リナ=インバースはあのマンドラコラを食べても死なないんだよ?」
「ジョン、そんなのは知っているわ。リナ様に食べてもらうのではなくて私たちが食べるのよ。
そうすれば自殺も出来るし、リナ様からの呪縛からも解かれるわ」
「それはすばらしいアイデアだね。じゃあ彼もリナの呪縛から解いてあげようよ」
「ジョン、あなたって本当にいい人ね」
クリスの言う通り、およそ15分ほどで村に着いた、中央に道があり、脇に店や宿屋、酒場もある。
思っていたより村というより街に近い感じがするが、村というから村なんだろう。
その中央の通りからちょっと外れたところに彼女たちの家はあった。
自殺するくらいだから貧しいんだろうと勝手に想像していたが、案外まともな家だった。
「リナ様。こちらが私たちの家になります。すこし食材を調達してきますのでお待ちください」
クリスはそういうなり、私たちを家の前に置いて買い物に行ってしまった。
「では、リナ様、ガウリイさん。どうぞこちらへ」
ジョンはそういうと私たちを中に招き入れてくれた。
中は外見と変わらず、特に貧しそうでもなく、というか裕福な部類にあたるだろうか。
綺麗なテーブルやアンティーク雑貨など、恐らくクリスの趣味と思えるものが色々あった。
最初に受けたお嬢様はあながち間違いではなさそうだ。
「綺麗な部屋ね。しかもまぁまぁ高価な物もあるわ。そういえば聞かなかったけど、あなた達なんで自殺しようとしたのよ?」
「えっと・・・それはクリスが帰ってきたらお話します」
どうやら彼だけの問題ではないようだ。結婚を親に反対されたからみたいな事だろうか。
「なぁリナ」
ガウリイが囁いてきた。
「何?どうかした?」
「いやさ、なんで自殺の原因聞いたんだ?お前、この件関わるの嫌そうに見えていたけど」
「まぁね、最初はホント自殺したいなんていうのをいちいち止めるなんて気はなかったんだけど。
昼寝もできたし、これからタダ飯も頂けるわけだから、少しぐらい力になってあげようかなってね」
「ふぅ〜ん、そっか。ま、お前が決めたらなそれでいいけどな」
ガウリイにしては引っかかる言い方だった。
「何?何か気になることでもあるの?」
「ん〜そうだな、しいて言えば・・・この家『血のにおいがする』」
「・・・・・・へ??」
「いや、だからさここ入った瞬間から今もだけど、血のにおいがするんだよなぁ」
血のにおい・・・すこし鼻をくんくんしてみる。感じない・・・目がいいのは知っていたけど、まさか鼻も常人よりいいとは・・・犬か!
「血って、何?鶏とか豚でもここで捌いたとか?」
答えは違いそうだが一応確認をしてみる。
「いや、これは俺が傭兵の時に嗅いだ血のにおい。人だろうな」
「な・・・なんですって〜!!」
つい大声を出してしまった。ジョンがきょとん?としている。
あははと作り笑いでごまかす私。
「私には分からないわ。ガウリイ、その臭いの元どこからか分かりそう?」
「ん〜、そうだなぁ。恐らく2階だな」
2階か・・・行ってみるか。
「ガウリイ、悪いけどあんたジョンの気を逸らしてくれない?その隙にちょっと2階見てくるから」