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「ああ、かまわないけど。大丈夫か一人で?」
「え?心配しなくても大丈夫よ、いざとなれば魔法でふっ飛ばしちゃうから♪」
「まぁ確かにお前さんなら幽霊とかも寄ってこないか」
「どういう意味よ」
「いや別に。じゃ今から気を逸らすから気をつけていって来い」
「たかだか2階に行くぐらいなのに大袈裟な。まぁガウリイこそちゃんと見張っていてよ」
「おうよ。じゃやるぞ」
と、同時に小さな石を拾い指で弾いた
『パリーン!』と大きな音がした。テーブルに置いてあったビンが割れたのだ。
「わ!あれ?勝手にビンが割れた???」
ジョンの気がビンにいった瞬間。
『浮遊』
階段の足音を聞かれないよう、ふわふわと2階へ。

なるほど・・・ガウリイの言うとおり2階に着たらかすかに血のにおいがする。
出かけていたから当然といえば当然だが2階は窓が閉まっていて薄暗かった。
『明り』
ぽぅと光が部屋を照らす。
「ゲッ・・・」
魔法の光に照らされて浮かび上がってきたのは、想像以上の光景だった。
壁や窓などにはなんて書いてあるか分からない文字がビッシリと書いてあり、
床には魔方陣、そして中心におびただしい血。ただしもう大分年月もたって血は固まっていた。
どうやら、黒魔術かなにかで何かを召喚しようとしたらしい。おそらくこの血はそれを召喚するための贄だろう。
この魔術は成功したのだろうか。彼女たちとどの様な関係があるのだろうか・・・

すると、
「ただいまぁ〜。あら、ジョン?どうしたの?」
どうやら、クリスが帰ってきたようだ。とりあえず下に下りよう。
『浮遊』
もういちど先ほどと同じ方法で下に。
ガウリイが気づいた。するとまた、
「パリン!」
「きゃあ!何々??」
ガウリイが割ったビンで驚くクリス。

「あ、お帰り、クリス。いい家住んでるのね?」
そ知らぬ顔で言う私。
「あ、リナ様。ただいま戻りました。そんな言われるほどの家ではございませんわ。以前住んでいた方が格安で売ってくださいましたの。
あ、今からお料理お作り致しますのでもう少々お待ちください」
「そう、ありがと。楽しみにしてるわ。・・・だから待っている間、自殺の原因なんて聞いていいかしら?」
ピクッっと彼女の動きが一瞬止まった。
「え、ええ。では、私は料理の準備がありますので、ジョンと話していただいてよろしいですか?」
そういうとクリスはジョンにちょこちょこっと耳打ちをしてキッチンに消えていった。

「では、リナ様、ガウリイさん。こちらへ」
ジョンはそういうと奥の部屋に私たちを案内した。外見では分からなかったがなかなか広い家のようだ。
来客用だろうか2人暮らしには大きすぎるテーブルがそこにはあった。
「ちょうど、イスも4つありますし、ここでお話を致します。時機に料理も出てくるでしょう」
そういってジョンは自殺するに至った原因を話し始めた。

「実は僕とクリス、数年前の記憶がないんです。気がついたらというのもおかしいですが、クリスと二人でこの家に暮らしていました。
クリスや他の村の人に聞いても僕、またはクリスの過去の事を知っている人は誰もいませんでした。
ちょっと不気味ではありますが、また互いに思い出を作ればいいかと、まぁ初恋みたいな感じで幸せな生活を営んでいました。
ただ、つい先日ある事に気づいてしまったのです。」
ある事?どうやらソコに今回の自殺の原因がありそうだ。話を促すとジョンは
「先日、近所の人が何気なく言った言葉なんですが「2階の窓は1年中閉まっているのね?たまには陽をいれないとカビがはえるわよ」と。
つまりそれは『家には2階部屋がある』という事です。」
と驚きの証言をしたのだった・・・っていやいや。
「いや、それは入ってすぐの所に階段が見えるし、そりゃあるでしょう。3階があったというなら外見からでも分からないからちょっとは驚くけど」
彼は首を横に振り、真剣な表情で言った。
「僕たちは、記憶しているだけでも約1年ここに住んでいますが階段がある事に気づきませんでした。
いえ、今もしっかりと凝視ししてうっすら階段が見える、そんな程度です」
どういう事だろうか?この表情からして嘘は言っていないだろう、第一この嘘をついた所で彼らには何の徳もないはずだ・・・2階の異様な光景を隠したいなら尚更だ。
「じゃあジョン、あなたが言っている事が本当だとしてよ、どうしてそこから自殺なんてぶっ飛んだ発想になるのよ」
「その凝視しないと見えない階段。僕たちは絶対に上ることが出来ないんです。それで上が気になるので近所の方にちょっと上を見てきてくれないかと頼んだんです。
もちろん、この奇異な体質の事は隠してですが。そうするとその方はなんの抵抗もなく階段を上っていったんです、僕たちから見ると空中を歩いているみたいでしたが。
そして程なくして悲鳴があがり勢いよく降りてきて「あなた達何をやっているのよ!村長に言いつけるからね!」と言って出て行かれてしまったんです。
そしてその晩、村長やら若い人達が5,6人来て「2階を見せてもらうぞ」と言って、「悪いが村から出て行ってくれんかね、あんな事をされたのでは皆が不安で仕方ない」と村長に言われたんです」
なるほど、確かにあの黒魔術の儀式めいたものを見たらご近所には居てほしくない。
「それで仕方なくクリスと話をして、違う街に行くにしてもアテもないですし、よくよく考えればこんな奇異な体質では他の街でもうまくはやっていけないだろうと思って自殺を・・・」
ジョンの話が全て真実だとすると、あの魔方陣は誰が書いたのだろうか。これはクリスにも話を聞く必要がありそうだ。

「お待たせしましたリナ様、たいした御もてなしはできませんが、どうぞ」
話のタイミングを見計らったかの用にクリスが料理を運んできた。くんくん・・・あ、美味しそう♪
「凄いわね、一人でこんなに美味しそうな料理が作れるなんて」
褒めたのだが、彼女の反応はちょっと複雑そうだ。
「ジョンから聞いたと思いますが、何故か作れてしまうんですよ。あ、お代わりもありますから遠慮なく食べてくださいね」
「じゃ、いっただっきま〜す!」
パクパク、ムシャムシャ・・・
「ってガウリイなんで私の皿から料理取ってるのよ!まだあんたの皿に料理あるじゃない!」
「ああ、この皿の料理は毒が入っているから食えないんだ、だからお前の飯もらう」
「って何言ってんのよ毒?そんなの・・・」
ちらりとジョンとクリスの表情を見た、明らかに動揺している
「あんた達、自殺止められたからって腹いせに私たちを殺そうとしたわけ??」
「なんで言ってしまうんですかガウリイさん!せっかくジョンがあなたをリナ様から解放するすばらしい案を考えてくれたのに!」
案・・・あの時の道でのコソコソ話ているのはそういう事だったか。・・・てあれ?
「ガウリイ・・・どういう事かなぁ?」
「いやいやいや、俺は知らんぞリナ」
まぁそりゃそうだろう、万が一にも二人の計画に乗っていたのであればガウリイは死んでいるのだから。
「どうやら、ちょっと勘違いしているみたいね。別にガウリイは私に無理やり旅をさせられているわけではないわよ」
二人が驚く
作品名: 作家名:リスキナ