二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

みんな目金を好きになる

INDEX|6ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

 キキッ。車が雷門校門前で止まった。
 降りる際に夏未は場寅にここから離れるように告げる。
「お嬢様……どうかご無事で……」
「場寅。お父様にも伝えて。夏未は必ず帰ると」
「……はい……」
 場寅の皺の刻まれた目尻に涙が滲む。
 車を出ると音無が待ってくれていたようで駆け寄ってきた。
「夏未さんっ。目金さんはどうでした?」
「連れてきたわ」
「おはようございます」
 目金の姿を見るなり、涙ぐむ音無。
「ああ目金さん。ホントお願いします。皆を救ってください」
「は……はあ……」
 そこまで雷門は酷いのか。背筋が薄ら寒くなる。燃え上がった魂の炎に霧吹きをかけられる気分だ。
 校門を潜り、目金は確信した。本当に酷いと。


 運動部が朝練を始める早朝から賑わうグラウンド。恐らく、練習する目金を見学する為に早起きして来たのだろう。誰もが目金によく似た眼鏡をかけ、髪型もそれっぽく整えている者もいる。そして聞こえてくる話題は全て目金の眼鏡をいかに忠実に表現するかの議論だ。いくら惚れ薬で注目を浴びても、まっぴらごめんである。
「こ、これはその……恐ろしい……」
「でしょうっ!?……許せないわ……!」
 目金の呟きに、クワッと振り向く夏未。車でのしおらしい姿はどこへやら。彼女の瞳は雷門の平和を奪還すべき使命に燃える戦士の目をしていた。
「もー勘弁してくださいよ」
 半泣きの音無であるが、彼女も彼女で事態が事態なら“新聞部部長との相打ち”を心に決めて拳を硬く握り締めている。目金の居ぬ間に、乙女たちの決意はダイヤモンドの刃にまで強固な攻撃力に高められていた。
「まず部室前で木野さんと合流しましょう。彼女一人では荷が重過ぎるだろうし」
「あの……サッカー部の皆は……」
 目金の問いに、あからさまに視線を逸らす夏未と音無。
「もう貴方の知っていた彼らはいないわ」
「もはやクリーチャーですよね」
 もう人間じゃないと言っているようなものだ。
「…………………………」
 顔を曇らせる目金。すると近くで叫び声が聞こえた。
「目金くんが落ち込んでいるぞ!」
「なんだって!!」
「目金さま!どうしたの!!けれど、そんな貴方も素敵!!」
 グラウンドにいた生徒たちは目金を見つけ、ずっと観察をしていたらしい。
 目を白黒させる目金に音無が囁く。
「あの人たちは貴方に危害を加える事はありません。どうやらカリスマ対象になっているみたいですよ」
 そうは言っても、憂鬱な表情に注目した生徒たちが三人を囲みだしてきた。
「目金たん……一体どうしたんだ……」
「きゃ!今、目金さんがこっちを見たわ!」
「ホント!そこ変わってよ!」
 小さな声も、集ればざわめきへと大きくなっていく。
「貴方たち」
 夏未が一歩前に出た。
「うるさいわ、お黙りなさい。私たちは部室へ行くの。お退きになって」
 相手は理事長の娘・雷門夏未。惚れ薬の効果はあっても逆らえない。生徒たちは部室へ続く道を開ける。


「さ、行くわよ」
 夏未の後ろを音無と目金がついていく。
 部室の回りも目金がいないかを探っている生徒が張り付いていたが、夏未が来ると去っていった。
「木野さんはどこ?部室に皆を閉じ込めて、ここで待ち合わせたのに」
「どこでしょうね。私、見てきます」
 足を止め、夏未が辺りを見回し、音無が部室裏に回ろうとした時――――
「やめて!」
 木野の悲鳴が部室から聞こえた。
「木野さんっ」
 中に入ろうとする目金を夏未が止める。
「待って。様子を見ましょう」
 窓から中を覗いた。見れば、木野が誰かと揉めているではないか。目を凝らすと土門だとわかる。
「やめて!土門くん!早まらないで!」
「離してくれアキ。俺、眼鏡が売り切れてて買えなかったんだよ!」
 土門の手に持つのはマーカー。どうやら彼は顔に眼鏡を描き込もうとしているらしい。
「そうだぞ土門。描いたって何の意味にもならない」
 円堂の声がする。木野と一緒に土門を止めてくれているようだ。顔は見えないが、声が明るい事から彼は眼鏡を手に入れたに違いない。
「木野さん」
 コンコン。夏未は窓を小突いて木野を呼ぶ。
 木野は頷き、仲間を閉じ込めるようにして外に出る。ドアノブには別の鍵が上から取り付けられていた。
「夏未さん。……目金くん、来たんですか」
「ええ」
 夏未の背から目金は姿を現し、軽く会釈する。
「皆はどう」
「……土門くん以外は眼鏡をかけてます。中には鼻眼鏡やミレニアムの2000眼鏡まで……」
 木野は話の途中で噴出し、部室の壁を叩いて笑い出した。ずっと我慢していたのだろう。
「それにしても……水は止めたはず……。なぜこんなにも浸透しているの」
「考えたくなかったんですけど……」
 落ち着いた木野が向き直り、両手を広げて見下ろす。
「飲む以外に……手を洗っても……」
「まさか……だったら私たちも……」
 時間が無い。交差する二人の視線の中で、同じ言葉が過った。
「目金くんもいるし、新聞部の部長と話をつけましょう」
「そうですね。音無さんは……」
「部室の裏に行ったはずですよ」
 部室の裏に回る三人。そこでは音無と、鬼道がいた。
「お兄ちゃん……」
「春奈。漸く気付いたんだよ」
 鬼道の顔には、特徴とも呼ぶべきゴーグルはつけられていない。代わりに眼鏡がかけられている。
「今の時代は眼鏡だ。ゴーグルなんて、俺はなんて愚かだったんだろう……」
「お兄ちゃん……眼鏡は時代でつけるもんじゃないよ」
 鬼道はよろけ、膝をつく。度が合っていないらしい。眼鏡欲しさに血迷ったのだ。
「私、お兄ちゃんを雷門で見た時、ゴーグルを見てどうかと思ったけど、お兄ちゃんなりに思い入れがあったんだよね。易々と眼鏡に取り替えて欲しくないっ」
 春奈は振り返り、夏未たちのもとへ行く。
「新聞部へ行くんでしょう。案内しますよ」
 彼女は大股で進みだし、夏未たちも共に向かった。