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みんな目金を好きになる

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 新聞部の部室には、部長しかおらず好都合だった。他の者はグラウンドで目金を待っているのだろう。彼は目金を見るなり一人騒ぎ出す。
「おおお!目金くん!間近で見ればなんと美しい芸術的な眼鏡!是非、独占取材をさせてくれ!」
 握手しようと伸ばされた手を音無が払う。
「茶番はやめてください。部長」
「音無くん。君にそう呼ばれるのは久しぶりだな」
「私、知っているんですよ……」
 音無の言葉に、部長は真顔になる。
「部長が惚れ薬使った事。それで記事のテーマに意外性を持たせようとした事。でも、失敗でしたよね。皆、目金さんじゃなくて、目金さんの眼鏡を好きになってしまった」
「そこまで知ってるなら、昨日の内に俺を糾弾すれば良かったものを」
「惚れ薬の効果を掴めませんでしたから」
「へえ。それで、俺にどうして欲しいんだい」
 眼鏡のフレームを押し上げ、鼻の筋にあたる金具を弄った。彼はすっかり眼鏡の魅力に取り付かれている。
「率直に言います。どうすれば皆を元に戻せますか」
「薬を作ったのは小此木先生だ。貰う時に、数日は効果が続くと言われたよ」
「小此木先生ね……。先生に聞く事にするわ」
 踵を返し、背を向ける夏未。
「たかだか数日じゃないか。それに目金くん、君は最高に似合う眼鏡なのに……最高に輝いていると思うのに、止めてしまうのかい」
 去ろうとするサッカー部に、部長は言う。目金は肩を竦め、苦い笑いを浮かべた。
「眼鏡はかけて輝くもんではないですよ。寧ろ、輝くものを見る道具ではないですか」
 フレームを押し上げ、階段を下りていく。一人残る部長に、音無が扉を再び開いた。
「なんだ、忘れ物か」
「言い忘れた事、ありまして」
 俯き、視線を彷徨わせてから部長を見据える。
「部長、なんでこんな事をしたんですか。って、聞いたら答えてくれますか」
「誰もが驚く記事が作りたかった。サッカー部の栄光物語に並ぶくらいの、奇跡が欲しかったんだ」
 部長はまた眼鏡を弄った。本人は“輝くもの”を手に入れた優越感に浸っているのだろう。
「新聞部にいた頃、先輩がたから貴方の話をよく聞きました。皆、貴方に憧れていました。それは……貴方が良い記事を作るのではなく、記事に情熱を注ぐ姿にです。経過にこそ、貴方の魅力がありました」
「スッポンって呼ばれるくらいだからね。しかし……」
「元に戻られた時、わかってくださるのを願います」
 音無は扉を閉め、階段を下りる音が次第に消えていく。辺りは静まり返った。
「彼らなら、戻せちゃう気がするよ」
 出てきた声は、寂しそうな音に染まる。
「また奇跡を起こすのか、サッカー部は」
 机の上に座り、膝を抱え込んだ。
「妬けちゃうよ音無くん。君の眼鏡もなかなか素敵だ」
 膝を下ろし、隣の机を蹴った。