past 後編
第七章
「来た。」
エドワードがそう言ったと同時に、窓の向こうから車のエンジン音が近づいてきた。
そしてエドワードが窓から顔を出すとちょうど車はキキッと音をたてて止まった。
車からロイが出てくる。
見上げたロイとエドワードの目が合った。
ロイが少し口元を上げうっすらと笑った。
それを見てエドワードも笑顔を向ける。
リザが車から降りたのを合図に視線を外す。
ロイはまっすぐに建物に入っていった。
エドワードはゆっくりと視線を窓の外の正面に向ける。
そこには姿は見えないが、軍人の気配がした。
おそらく正面の建物だけじゃない、周りは完全に取り囲まれているだろう。
逃走ルートはおそらく0。
だが、そんなことは百も承知。
エドワードは手を合わせ、この部屋の唯一の窓を錬金術で塞いだ。
完全に塞がれる直前に正面の建物の窓から慌てた軍人が垣間見えた。
「残念でした。」
エドワードはニコリと笑って見せた。
話の邪魔はさせない。
「心の準備出来たのか?」
「・・あぁ、出来てるよ。」
「きっと上手くいくわ。」
「そうですな。」
「俺もそう思うよ。」
コツコツと二つの足音が近づいてくる。
「大丈夫だと思う。でも、危ないと思ったら逃げてくれ。」
「・・・大佐みたいな事言ってんなよ。」
「ハハッ確かに、」
コツコツコツ―――コツ、
「皆は俺の後ろに、」
ガチャリ―――
「・・・・お招きいただき感謝する、と言うべきか。」
「大佐、久しぶりだな。」
ロイがエドワードの後ろに居る3人に少し眉を寄せた。
(グレイシアにハボックも居るとはな・・・)
エドワードは手にしていた拳銃を後ろに立つ3人に向ける。
ロイはアームストロングとハボックと一度視線を合わせた。
脅されてその場に居るのならば、合図を送り形勢逆転することは容易い状況だった。
だが、ロイからの合図を受け取る者も、銃口から逃げようとする者もその場には居なかった。
「要求を聞いてやろう。」
「・・話を聞いて欲しい。」
「聞けばおとなしく捕まるというのか?」
「いいぜ。」
「ほう、随分な自信だな。」
「俺は俺を、俺の知る大佐を信じてるから。」
「・・・・・・さっさと話せ。」
「・・大佐、あんたは俺を知ってる。」