02:ふたえの春
そこでは子どもが、誰かの手が白詰草をきれいに紡いでいく様子を眺めていた。春の陽光は、眩しさなんて感じさせずに、ただ私の髪をあたためている。よどみなく動く手は、どうやって編み込んでいるのかなんて一つも悟らせてくれない。それはそれを眺めている少女も同じだったらしい。ただ、緑の茎を白が飾っていくのを、じっと見ていた。足下は土の匂いと、草の匂い。それから、私の名前を呼んで、立ち上がる姿を見て気付いた。ああ、この人、おかあさんだ。じゃあこれは、私の夢だ。この子どもは、私だ。
そこは、懐かしかった。
けれど、そこから離れることは、さみしくはなかった。だって、そっと目尻を拭ってくれるあたたかな手があるから。名前を呼んでくれる、穏やかな声があるから。だから、さみしくない。さみしくないよ、おかあさん。夢は、自分の知らない光景さえ、私のものとして見せてくれる。