Kid the phantom thief 前編
家に帰りつきドアを閉めると、ズルズルとしゃがみこんでしまった。
ハクが心配するように周りを飛び回る。
だが、新一は涙を止めることが出来なかった。
怪盗キッドへの想い
自分の情けなさ
黒羽快斗という同じ年の男
黒羽快斗の背負っていたもの
周りの悲しむ人達
怪盗キッドだけじゃなく黒羽快斗をも葬った何か
いろいろなものが新一の心を掻き乱した。
翌朝、新一はそのまま玄関に居た。
体が完全に冷え切ってしまっている。
迎えに来た蘭が気付き、博士に連絡をする。
博士が新一の家に来ると、
蘭は精一杯の笑顔で「新一をよろしくお願いします。」と言うと学校へ向かった。
「大丈夫かの?」
「・・・分かってる。分かってるんだ・・・っ・・」
「・・蘭くんも分かっとるよ。」
「・・・俺・・は・・・」
「今は、早く温まることじゃ。哀くんが待っとる。行こう。」
体が温かさを取り戻すと、博士がココアを入れて持ってきた。
「下で哀くんが待っとる。」
「・・・また叱られるな。」
「じゃろうの。」
「行ってくる。」
「新一、大丈夫じゃ。」
「・・・・ありがと。」
階段を下りていく。そうして地下に辿り着く。
扉を開けると後ろ姿だけでも怒っているのが分かる灰原が居る。
「灰原。」
「可愛いわねその鳩。」
「えっ・・あぁ、ハクっていうんだ。」
ハクはずっと新一の肩に乗っていた。
「ハクも随分冷えてたわ。」
「・・ぇ・・・」
ハクは玄関でしゃがみこんだ新一の傍を離れなかった。
そのままずっと新一の肩に寄り添っていた。
そのため、新一と同じく朝には冷え切ってしまっていたのだ。
「良いパートナーが出来て良かったわ。」
「パートナー・・?」
「えぇ、何せあなたは本当に傍に居ないと無茶をしてばかり。」
「・・・そういうことか。」
「ハクはきっとあなたから離れないわ。どうやらとても心配性のようだから。」
「・・あぁ、・・知ってる。」
「ハクを凍え死なせないように、二度と玄関で徹夜なんて止めてちょうだい。」
「・・約束する。」
「約束という言葉の意味を分かってるのかしら。」
「・・・・一応は、」
「まったく。」
それと、と灰原は続けた。
そしてそれに従い新一は蘭にメールをする。
『心配かけて悪かったな、もう大丈夫。
明日は一緒に学校行く。』
すぐに返信はきた。
蘭はずっと携帯を片手に待っていたのだろう。
『明日は朝ごはん持って行ってあげるね。』
蘭らしいな・・と思った。
『楽しみにしてる。』
『了解v』
携帯を見つめる新一の表情を見ていた灰原が微笑む。
それに気付いた新一がなんだよと言う。
「私だったら、あなたと幼馴染なんて耐えられないわ。」
「オメーなぁ・・・」
「あら、本心よ?」
「はいはい、そーかよ。」
あなたと幼馴染なんて本当に耐えられない。
彼女は本当に強い人――
作品名:Kid the phantom thief 前編 作家名:おこた