Kid the phantom thief 前編
「お前に聞きたいことが山程ある。」
「・・・・・・なんで・・しょう?」
「何故そんな格好をしている。」
「・・・・・・。」
「お前はキッドじゃない。」
「・・・・それが・・どうし――ッッ」
「・・・・ッ!?」
ゴホッゴフッッ
突然目の前でキッドが傾き倒れていった。
苦しげな咳を繰り返すキッドに中森警部が駆け寄ると、
口を押さえる手からは真っ赤なものが滴り落ちた。
「・・・おま・・・え・・・」
ゴホッゴホッゴフッッ
「・・・服を脱げ。俺の上着を貸す。すぐに病院に行くぞ。」
「・・・・っ・・!?」
「そんな状態でっ・・・・ふざけやがって!!!!」
「・・・・ハハッ・・さすが、」
「・・・ぁあ?」
「アイツがあんたとのやり取りを楽しみにするわけだ。」
「・・・・・・・っ・・お前っ・・!!?」
やっぱり―――
「そうだよ。
俺はあんたのよく知る怪盗キッドじゃない。
あんたの推理は正しい・・っゴホッ」
「・・・・分かった。だが今はそれより・・」
「でも、今は俺が怪盗キッドだ。」
「・・・・・そうか。」
「だから・・捕まるわけにはいかない・・・・・。」
まだ・・・まだ駄目だ――
ッ!!!!!???
「失礼、中森警部。」
「・・・なに・・・・っ!!!!!??」
突如頭上から黒いバラの花びらが落ちてくる。
なんだと上を見上げたそのスキにキッドはマントを翻し姿を消す。
「・・・・・・なんて悲しい色だ。」
結局何も聞けなかった。
だが、俺は諦めん。
お前にはお前の理由があるのだろう。
だが俺にも俺の理由が出来た。
そんな体で無茶をするお前を止めてやる。
今は俺が怪盗キッド・・ハっふざけやがって。
怪盗キッドはお前みたいな悲しい色を振り撒かねぇんだ。
路地から出てきた中森警部の顔には、
以前のような闘志が漲っていた。
「お前がその気なら捕まえてやる。」
作品名:Kid the phantom thief 前編 作家名:おこた