Kid the phantom thief 前編
「なぁ、寺井さん。
あんた知ってたんだろ?
俺とキッドの関係。」
「・・・・。」
「そしてあの場にも居たんだろ?」
「・・・・・はい。」
「だったら分かるだろ。」
「・・・・ですが、」
「それに、あんたも俺と同じ気持ちだ。違うか?」
「・・・っ・・」
「老いてみえるけど、結構筋肉がある。
鍛えているようだし、俺を支えて此処まできたのに息が上がらない。
その手を見る限りだと、結構うまいんだろ?マジック。」
「・・・・。」
「続けさせてくれ。俺に、怪盗キッドを。
そんで出来ればサポートをお願いしたい。」
「・・さすがは快斗ぼっちゃまが認めた唯一の名探偵。」
「返事は・・・・」
「お手伝いさせていただきます。」
「ありがとう・・じ・・い・・・さ―――
そこで新一の意識は途絶えた。
だが、その呼吸は穏やかなもので安心する。
寺井は自分の上着を新一にかける。
負の連鎖を止めたかった―
だが、きっとこの方の言うとおり、彼がやらなければ私がやっている。
この真っ黒な怪盗キッドを・・・
快斗ぼっちゃま、
きっとあなたの望むことではないでしょう。
ですが、私はこの方を支えます。
初めてあなたが怪盗キッドの衣装を着たときに感じたものを感じるのです。
きっとこの方は『怪盗キッド』を傷つけたりなどしない。
大丈夫です。
あなたが信じていたように、
私もこの方を信じようと思います。
快斗ぼっちゃま、
あなたが愛した人はとても素敵な方ですね―――
新一が目を覚ますと、目の前には見慣れた光景。
暖かい布団にくるまれ、長年使っている枕。
ここは・・俺の部屋・・!??
自分が意識を手放す前に居た所を思い出す。
「夢?・・・まさか・・・」
飛び起きると体が異様にだるい。
やはり発作を起こしたんだ。
あれは夢じゃない。
それにこの服は寺井さんが渡してくれたもの・・・
一体どうやって・・
さすが、キッドの協力者ってことか・・。
「・・・・ん?」
何か音が聞こえてきた。
それに反応して顔を上げるとそこには――
真っ白な鳩
キッドの鳩だ――
鳥かごの中に一羽の鳩が居た。
キッドのそばにいつも居た真っ白な鳩。
その一羽がここに・・・・
「寺井さん・・ありがとな。」
かごを開けると、喜んで飛び回る。
頭に止まったり、肩に止まったり。
お前、名前は?
無いのか?
じゃあ・・そうだな、
「ハク。」
白-ハク―だ。
お前はいつまでも白く。
白いままで居てくれな――
羽を動かし新一の周りをぐるぐると飛び回る。
「これからよろしくな。」
作品名:Kid the phantom thief 前編 作家名:おこた