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金色の双璧 【連続モノ】

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-3-


 シャカも端からアイオリアと戦うつもりできたのだろう、いつものような袈裟姿ではなく、珍しく身動きしやすい、訓練用の闘服だった。

 ―――上等だ。久々に派手な喧嘩をしようじゃないか。

 『私闘禁止』は『死闘禁止』と都合よく変換して、アイオリアが反撃に出ようとしたとき、反対の頬がまた高く鳴った。
「っつ!きさまっ!」
 条件反射的に繰り出したアイオリアの拳をさっとかわしたシャカは、更に鳩尾目掛けて鋭い蹴りを加えた。
「〜〜〜〜〜っ!!げほっ・・・」
「フ。その程度かね?惰弱な・・・っ!」
 グッと奥歯を噛み締め、沈みかけた身体をアイオリアは踏みとどめると、勢いよく身体を跳ね上げた。寸でのところで身を引いたシャカの鼻先にアイオリアの拳が掠めた。
「グダグダ言ってないで、来いよ?」
 アイオリアは挑戦的に睨みつけると、シャカを煽るように指先をくいくいと動かす。片方の眉を器用に上げて不敵な笑みを浮かべながら、フンと鼻を鳴らしたシャカも、すっと腰を落とし、構えた。
「・・・上等だ。覚悟したまえ」
 タンっと鮮やかに空を飛び、踊りかかるシャカの蹴りや拳を防御しながら、アイオリアが攻撃をするとシャカもまた、流れるように拳を交わす。

 どれだけの時間が過ぎたのか。

 当前のように決着はつかない。
 黄金聖闘士が本気で争えば、あっという間に時間など過ぎてしまう。しかも、まだ二人は小宇宙を燃焼してはいなかった。ただ剥き出しの感情のままに、身体をぶつけ合っているだけなのだ。
「―――そろそろ、本気を出すかね?」
 まるでアイオリアの気持ちを推し量ったように、パンっと小気味よい音を鳴らしながらシャカは合掌し、すかさず小宇宙を燃焼しはじめた。あっという間に見事なまでの防御の結界を作りあげ、シャカはその中で涼しい貌をアイオリアに向けた。
「そうだな!」
 負けじとばかりにアイオリアも小宇宙を高め、いよいよ本気で攻め込もうと、じりじりと間合いを詰める。そして、周囲の音が消えた時、鉄壁の防御を誇るシャカの結界を砕こうとアイオリアが拳を放った。
 来るであろう衝撃に耐えようとアイオリアが奥歯を噛み締めた、その刹那――。
「なっ・・・!?」
 拳が結界に触れる直前、スウッとその透明な壁が掻き消えた。当然のごとく、すり抜けた凶器の拳はメキッといやな音を伴いながら、シャカの身体に食い込んだ。
 本気で打ち込んだ拳を、シャカは小宇宙での防御をすることもなく、まともに喰らったのだ。ましてや、聖衣も纏ってはいない。事の重大さにようやく気付いたアイオリアは、衝撃のままに飛ばされ、柱に全身を打ちつけて崩れ落ちていくシャカの元に駆け寄る。
「おまえ!・・ッカ・・・やろうがっっ!」
 全身から血の気が引いていくのを感じながら、顔面を蒼白にして倒れかけるシャカの身体をアイオリアは受け止めると、そのまま身体を抱え込んで膝上に乗せる。少しでも楽に息ができるようにとシャカの背中を擦った。
「ぐ・・げほっ!・・・ごほっごほ!」
「なぜ!?結界を消したっ!下手すれば死ぬだろうがっ!?」
「・・・・るさい・・怒鳴るな。ごほっ・・」
 つらそうに息をつき、眉を寄せるシャカに、先程までの怒りもすっかり消えたアイオリアはシャカの細い身体を擦り続けた。

作品名:金色の双璧 【連続モノ】 作家名:千珠