幼馴染
■桃の花
ひなまつりもいいけれど、桃の花を見に行こう。
大切なキミたちと一緒に
「ねえねえ。あれって、乾と桜乃ちゃんじゃない?」
菊丸の言葉にその場の皆がその方向を向いた。
「・・・なんで、一緒にいるんだろうね?」
「さあ?」
「・・・仲よさそうっすね」
「そうだな・・・」
テニス仲間で二人が幼なじみと知っているものは海堂のみ。
その場にいたが、言う必要もないので無言のままだ。
基本的に乾から止められているのだが。
ちなみに、海堂が知っているのは恋人の朋香が教えてくれたからである。
「治兄、景兄は?」
「目的地にもう行ってるよ」
「そうなの?」
「ああ、まあ荷物あいつにまかせたから。オレはその場所までサクをエスコートってことかな?」
「うんっ。嬉しい」
「行こうか?」
「うん」
桜乃が乾の腕に自分の腕わ絡める。
傍からみれば、恋人同士。でも、それはいつものことなのだ。
『・・・知らなきゃ、誰だって誤解するんだうけど。先輩は解かないんだろうな』
実のところ、朋香とともにこの後の事に誘われている海堂。先程桜乃とここを通ったときにこちらを見ていたのはわかっていた。
『オレも帰るか』
海堂は呆然としている皆を置いて、帰っていった。
「サク。今日は朋香ちゃんと海堂も呼んでるんだろ?」
「うん。景兄にも了解はとったよ。でも最初は三人でって話」
「じゃ、急がないとな」
始まるのは春の祭り
「おせーぞ」
「ごめんなさい」
「時間ぴったりじゃないか」
「それでもオレ様を待たせるな」
いつもののオレさまの跡部に桜乃は笑って抱きつき、
乾は苦笑した。
「まあいいげどな」
「ここって、景兄の所有しているところなんだよね。いつ来ても綺麗だね」
「まあ、桃の花だけを植えてある場所はここぐらいだ」
「三人で過ごすのもいつものことだけどね」
「あ? 当たり前だ。桜乃とお前がいないと始まらないだ?」
「そうだよね」
跡部と桜乃は既に恋人同士なのだが、何かにつけ乾を呼ぶ。
既に当たり前のことらしい。
「少しは二人で過ごせばいいのに?」
「それは、ちゃんとしてるから」
「////うん」
照れた桜乃を抱きしめている跡部は満足そうに笑う。
「はいはい。ごちそうさま」
「ただ、お前がいないと気持ち悪いんだ」
「・・・治兄がいないとダメなの」
「まったく、そんなのだからオレに恋人が出来ないんだ」
「なんだ。作るつもりなのか?」
「だから、作りたくてもできないんじゃないか」
乾の言葉に跡部は笑い、桜乃は困った顔をする。
「治兄に迷惑かけてる?」
「いいや、これとでいいと思っている自分がいるからこれもまた困ったものだよな」
「まあ、オレと桜乃が認めた奴以外はダメだからな」
「・・・はいはい」
桃の花の節句
女の子の節句
だけど、ここには三人の空間がある。
だれにも邪魔できない・・・そんな空間。
「さあ、はじまりだ」
この後に朋香と海堂がきて、桜乃はとても喜ぶ姿が見られるのだが。
きょうはたのしいひなまつり