幼馴染
「いいにおいだね」
「これは沈丁花だな」
「治兄、知ってるの?」
「ああ、これの花言葉は『栄光』『不死』『不滅』」
「・・・なんか、景兄みたい」
クスクス笑う桜乃に、乾も笑った。
二人は、跡部を公園で待っている間に公園を散歩していたのだ。
そこに咲いていた、沈丁花。
淡いピンクというのか、赤というのかはわからないが、小さい花(花びらに見えるのは「萼」だが)がたくさん咲いている。
姿はあまり知る人はいないけれど、存在感があるものだ。
「・・・なんか、春に向かってるって感じだね」
「そうだね。それにもうすぐサクの花がたくさんだからね」
「うん。桜がたくさん咲くよ?」
名前に桜がついている桜乃はいつも桜とともにいた。
「そうだね。あ、景吾だ」
「景兄っ」
「またせたな」
「ううん、公園散歩してたから大丈夫」
「そうだな。でも、どうしたんだい? 遅刻なんて」
「あ? テニス部の連中に捕まったんだよ」
「前の人たち?」
「ああ」
「・・・そうなんだ」
「貞治、お前また変なこと考えてないよなぁ?」
「何を? そんな当たり前のことを」
ニッコリ笑う乾に跡部は苦笑した。この幼なじみは本当に自分達に甘いのだと。
「そういや、さっきそこの花見てたよな?」
「うん、沈丁花っていうんだよ。景兄みたいっていってたの」
「オレ?」
「花言葉が『栄光』『不死』『不滅』なんだって」
「ほう、オレ様にぴったりじゃないか」
「でも、私ね花言葉がなくてもそう思ったたよ?」
「そうなんだ、サクはどうしてそう思ったの?」
「オレも聞きたいな」
「ん? だって、見えなくても優しい存在がわかるんだもん。景兄みたいじゃない?」
「・・・・・・」
跡部は不意打ちの言葉に顔を赤くする。乾はそれを見て笑った。
「でも、治兄も一緒だよ? いつも優しい」
「ありがとう」
こちらはなれたものだ。
「さあ、景吾の家にいくんでしょ?」
「うんっ」
桜乃が先に歩いていく。それを二人はおいかげる。
「あ〜、ったく」
「まったく、サクの言葉に慣れないと」
「ぜってぇ、無理。あんな突発的なのにどうやって慣れるんだよ」
「・・・平常心とか」
「オレはお前じゃねぇ」
「失礼な」
漫才のような掛け合いに桜乃が呼びかける。
「はーやーくー」
「行きますか。お姫様がお待ちだよ」
「わかってる」
三人は甘い香りの中を帰っていった。