いけるしかばねinバレンタインデー【静帝】
「こんにちはー。お客さん、いっぱいいます?」
玄関から帝人の声が聞こえてきた。
「若い子が三人しかいないよー」
『臨也、帰れ。こっそり、帰れ』
「なんで、俺が……」
『今日はバレンタインデーだぞ。家を破壊されては』
「やっほー、みかプー。……あらら、旦那にそんな事して、いや最高の乗り物?」
迎えに行ったのだろう狩沢の声が廊下から聞こえる。
当然のように静雄と帝人は一緒に来たらしい。
「あー、遅かったって、って、え?」
「ウサギ?! シズちゃんがウサギ?」
「なんで、お前がここに居んだよ。臨也君よぉ」
「やめてくださいっ。僕が落ちちゃうじゃないですかっ!!!」
「悪い」
走り出そうとした静雄は肩を落とす。
ウサギの耳をつけた静雄につけた首輪を帝人が引っ張る。
帝人は猫なのか犬なのか動物の耳のついたフードを被っていた。
「狼っ!!」
「え? よく分かりましたね。さすがに兄妹ですか」
「はあ? 何それ。もしかして……」
「九瑠璃ちゃんと舞流ちゃんからバレンタインデーってことでこの上着を貰いました。静雄さんのはオマケ?」
楽しそうに静雄の首についた首輪をいじる帝人。
「臨也さんに二人から牛さんもうもうパジャマを」
「いらない」
「チロルチョコもついているのに?」
「帝人君からの俺へのチョコは?」
「あるわけねえだろ」
睨みつけてくる静雄に険悪な雰囲気になりそうだったが「ありますよ」と言った帝人の一言で変わる。
静雄が背負ったバッグから何かを出そうと肩から背中に向かおうとする帝人。
危なっかしい。
「みかプー私が出したげる。なんか、シズちゃん危険っぽい」
「静雄さんは我慢できる人ですよね」
ウサギの耳を引っ張る帝人。
顔を真っ赤にした静雄は何も言わずに強く帝人を抱きしめる。
骨が折れるような音がしたがみんな無視した。
「セルティさん~。もうすぐ焼き上がりますよ」
美香の声にセルティは台所に戻る。
作品名:いけるしかばねinバレンタインデー【静帝】 作家名:浬@