サイレン
intermission2
「さて、お集まりの諸兄。万難を排してお越し頂いたことにまず感謝の意から述べようか」
「うっとうしい」
「おや、つれないねえ」
「あいにくそんな気分じゃないんでね」
「僕も」
「多数決なら仕方ない。ベッドを抜け出した諸兄は減点が怖いとみえる」
「違うよ!」
「そんなんじゃねーよ!」
「ごめんごめん、分かってるよ。だって君たち顔が怖いんだもん」
「だって、そんなこと言われても」
「本当に深刻な話って、深刻な顔をしてやっちゃ駄目だって思わない?痛みばかり目について答えが見えないだろう?」
「・・・うん」
「こっちのお兄さんは深刻って言うより、怒ってるって感じだけど」
「単刀直入に、聞く。お前、どう思う」
「僕?僕はね」
「なんで教科書持ってきてるの?」
「これ、だと思うな」
「嘘」
「・・・そう、か」
「反応が、分かれたね。君と同じところに僕も行き着いたみたいだね」
「ええと、本気なんだよね?」
「当たり前だ。こんなこと冗談で言えるか」
「さて、ここからが問題だ」
「ここまでだって十分問題だと思うんだけど・・・」
「大丈夫?少し時間を置く?」
「・・・大丈夫、続けて」
「問題は、現在のところ解決策と呼べるものはなにひとつないってことだ」
「月を墜とせば済む」
「ああ、そうだね。その方法があった」
「無理だよ!」
「反対に1票入ったよ」
「分かったよ。話を続けろ」
「治療法も確立してない、発症を防ぐ方法さえ分かってない。そういうことは、何も分かっていないんだ」
「・・・うん」
「ヒトを噛む、それは彼らの本能だ。それを押さえる方法もない」
「じゃ、お前も行き着いたのは結局そこかよ」
「ベストな方法じゃない。根本的な解決にはならない。でも、今よりはずっとましになるはずだ」
「もっとましな方法探せなかったのか?」
「他力本願は良くない。君にできなかったことが僕にできるものか」
「ごめん、何の話?」
「ああ、ええとね」
「その本、閲覧禁止って書いてあるよ?」
「これ」
「・・・無理だよ!ていうかこれ勝手にやったら犯罪・・・!」
「お前らは降りてもいいぞ。俺はやる。ただしばらしたら俺が殺す」
「僕もやるよ。僕が何のために図書館からこの本を盗んできたと思ってるんだ」
「僕は・・・」
「うん、選んでいいんだよ。こんなこと、いくら友達だからって強制はできない。ノーでも黙っててくれれば、それでいい」
「・・・月が、」
「ああ」
「丸いね」
「そうだね」
「僕もやる」
「いいんだね?」
「僕にもできるかな」
「できるさ」
「君なら。僕たちなら。」