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囚われ

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頭はなにも考えずに、身体が勝手に動く。
佐隈との距離を詰めた。
それと同時に、佐隈をつかまえる。
「えっ」
佐隈が声をあげた。
戸惑っているらしい。
それにはかまわず、ベルゼブブは佐隈を抱きあげた。
佐隈は短く悲鳴をあげたが、それにもかまわず、ベルゼブブは佐隈を軽々と抱きかかえて事務所を歩く。
「ベルゼブブさん……!?」
そう呼びかけられた。
だが、ベルゼブブは黙ったままでいる。
そして、応接セットの近くまで行くと、二人がけのソファのほうに佐隈をおろした。
少々乱暴であったらしく、ソファの上で佐隈の身体がほんの少し跳ねた。
佐隈はソファにあおむけで寝る格好になった。
ぼうぜんとした表情をしている。
ベルゼブブは眼をそらし、ソファの背に右手を置いて、口を開く。
「私はあなたを嫌ってなんかいない」
強い声で断言した。
胸の中で感情が大きく揺れている。
早く外に出せと暴れている。
「あなたにさわられるのが嫌なのは、あなたにさわられたくないのは、あなたが嫌いだからじゃない」
もう抑えることはできない。
引き返すことはできない。
今まで自分の中にとどめていた想いが、口から外へと出て行く。
「あなたに触れられると、体温が伝わってきて、心が反応してしまう。もっと、あなたに触れたくなる」
佐隈に触れたときのことを思い出す。
やわらかな感触、そして、温もり。
触れているところから溶けていくのではないかと錯覚する心地良さ。
心が追い求める。
もっと触れたい。もっと、もっと。
「あなたが、ほしくなる」
欲情、だ。
それが自分の中にあること自体は否定しない。絶対に抑えなければならないものだとも思わない。
自分は男だから、そうしたものがあって当然だろう。
「でも」
そう言った直後、ベルゼブブは人間に見える姿から本来の姿にもどった。
「私は悪魔だ」
ソファの背に置いた手は悪魔のものでしかないものに変わっている。
「あなたとは、違う」
ベルゼブブは自分に誇りを持っている。
悪魔であることについても誇りを持っている。
しかし、佐隈に触れたくなったときに、ふと、心に引っかかる。
たがいの手を重ねたら、それぞれの手があまりにも違う。
自分が悪魔であることに誇りを持っている。
けれども、佐隈に触れる手が悪魔の手であっても良いのだろうか?
それに、佐隈が嫌なのではないだろうか?
少し触れるぐらいなら気にしないだろうが、自分が望んでいるようなことはされたくないのではないだろうか?
そうであっても、しかたない。
自分は悪魔で、佐隈は人間なのだから。
「心が望んでしまうことは、どうしようもない。一瞬にして思ってしまう、感じてしまうことを、止めることなんかできない。私にできることは、自分の想いを抑えつけて外に出さないようにすることだった」
今、佐隈はどんな顔をしているのだろうか。
おびえた表情をしているのではないだろうか。
悪魔に迫られて。
「いつも必死で抑えつけている」
こんな話、聞きたくなかっただろう。
ベルゼブブの胸が痛んだ。
だが、もう今さらで、過去にもどってやり直すことはできない。
佐隈のほうを見ないまま、心にあることを吐き出す。
「だから、望みがかなわないのなら、私に触れないでください……!」
触れたい、けれども、触れられたくない。
触れられれば、もっと触れられたくなるから。望んでしまうから。抑えられなくなってしまうから。
望みがかなう可能性が、ひとかけらもないのなら、自分に触れないでほしい。
そう心の底から願う。
作品名:囚われ 作家名:hujio