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こらぼでほすと あれはれはぴば

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 年に一度ばかり指名してくれる客というのは、普通ではない。この店自体が普通ではないから、客も普通じゃないということになる。

 昨年までは、アレルヤが行方不明だったから、ティエリアが相手をしていたのだが、それも、これといって会話するとかではなく、対面の席に座って好きにしていてくれ、なんていうオーダーだった。

「ねぇ、アスラン。僕がいない間も、これ、あったの? 」

「だいたい、毎年あったな。ティエリアひとりで、相手してもらってたんだけどね。今年は、ふたりが揃うってサプライズにしてるから喜んで貰えるんじゃないかな。」

 つまり、自分がいない間は、この接客が苦手なティエリアが、ひとりで、どうにかしてくれていたらしい。そう思うと、申し訳ないと思う。

「ごめんね、ティエリア。」

「大丈夫だ。僕は、それほど無茶をされていない。」

 無茶をされていたのは、現ロックオンのほうだ、と、ティエリアが言うと、アスランもキラも肩を震わせた。

「うん、あの無茶フリは凄いよね? いきなり、蹴られたりしてたし・・・・ママが来れない時なんて八つ当たりだったもん。・・・あ・・・そうだよっっ、ティエリア、アレルヤ。こんなとこに来てる場合じゃないよ。早く、ママのとこへ行ってっっ。」

「うん、到着予定時間を過ぎてるから心配してると思うよ。」

 キラの言葉に、アスランもダメ押しする。今日、戻ってくるという連絡は受けていたから、社宅を片付けて食事の準備をして待っている親猫は、あまり到着が遅いと心配するだろう。

「ママ?」

 アレルヤは、ぽかんと口を開けている。なんせ、四年間、そういうことから離れていたから、すっかりと忘れているらしい。ティエリアのほうは、その名前を読んで頷いている。

「 ああ、ニールのことか。マンションのほうだな? キラ。」

「うん、そう。・・・明日は夕方には出勤だよ? ティエリア。衣装合わせするから。」

「了解した。ニールは出勤か? 」

「はははは・・・ダメって言っても出て来るだろ? おまえらのかーちゃんは心配性の貧乏性なんだからな。なんでもいいから、さっさと帰れ。道わかるよな? 」

 アスランとキラの間に割ってはいるように悟浄がやって来て、店の扉を開く。積もる話は明日にして、とりあえず、親猫に無事な姿を見せて来い、と、追い出した。



 ほぼ四年間、行方不明だったアレルヤは会話についていけない。だいたい、ニールって誰? 段階で考え込んでいる。

「ニール・ディランディ。ロックオン・ストラトスことライル・ディランディの兄の名前だ。コードネームを弟に譲った形になったから、俺たちは、ニールと呼んでいる。」

 タクシーに乗り込んで行き先を指定すると、ティエリアが、仄かに微笑みつつ、アレルヤの疑問の答えを口にした。

「ロックオンのこと? 」

「ああ、そうだ。あのバカライルの兄で、俺たちのリーダーだった男だ。」

「なんだ、ロックオンなんだ。ほんと、久しぶりだなあ。元気なんだね? 」

「日常生活レベルでは元気だ。マイスターは引退させた。」

「うん、ライルを見た時、それはわかった。やっぱり治らなかったんだな、って。」

 復帰できていたら、あの同じ顔で性格の違うライルが、ロックオンと呼ばれていることはない。まあ、元々、そうじゃないか、とは、アレルヤも思っていたから、口にしなかった。

「きみのことも連絡がされているだろうから、ニールは喜んで待っているはずだ。・・・・ったく、きみのお陰で、どれほど心配させられたかわからない。」

「うん、ごめんなさい。」

「俺じゃなくてニールに謝れ。俺は、この間謝って貰ったからな。」

 奪還されてトレミーへ戻ってから、ティエリアは、四年間の出来事について話はしてくれた。刹那が、世界中を放浪すると飛び出してしまって、ティエリアが、ひとりで、マイスターの仕事を引き受ける形になってしまったことに対しては、心底悪いと、アレルヤもハレルヤも思った。

「ただね、あの時、これが世界から受ける罰なんだな、って思ったから。」

「受けるなら、全員で受ける。勝手に走るのは感心しない。」

「うん、そうだよね。」

「だいたい、あのバカライルの保護は、ひとりじゃ手に負えない。刹那は、忙しそうだし、きみが、俺のフォローをしてしかるべきだ。」

「うん、わかってるよ。彼、意外と短気だし、キレると見境なくなるもんね。・・・ほんと、兄弟なのに違うんだよね。」

 今のロックオンは、先のロックオンとは、まったく性格が違う。それが、どうもおかしいと、アレルヤは肩を震わせる。ティエリアも、同じことを思いだしたのか、こちらも肩を震わせる。自分たち三人のマイスターのフォローをしていた先のロックオンは、あんなふうにキレたのは一度限りだ。それに、今、刹那がやっていることは、先のロックオンがやっていたことで、実質的には一番若い刹那が、リーダーをやっている形になっている。ティエリアは、自分には、引率するような強さはない、と、思っていた。

「刹那にやらせとけ。四年近く世界を放浪して経験も積んだんだ。しっかりしたぞ? 」

 という、ニールの提案に、そりゃそうだ、と、ティエリアも乗った。ニールの薫陶を誰よりも受けて身につけた刹那だから、ティエリアも従えると思った


 タクシーが到着して、マンションの前で降りた。いつ来ても変わらない景色だ。アレルヤには四年ぶりになる。

「なんにも変わってないね。」

「そうだな。」

 ここは、なんの変化もない。だが、世界は大きな変革を起こし、また歪んでしまった。このミッションが終わったら、さらに苛烈な状況になるだろう。

「アレルヤ。」

「なんだい? 」

「きみも俺も、まだ死ねない。」

「うん。」

「ニールには、何も告げるな。刹那の怪我も、トレミーの現状も。アロウズと戦っていることは、たぶん、知っているが、あの変態とかアリー・アル・サーシャスのことは教えていないんだ。」

「うん、わかってる。ろ、ニールには、安心して待っててほしいよね? 」

 僕、久しぶりの手料理が楽しみだ、と、アレルヤはティエリアに微笑む。四年前、世界が変わったら、自分たちのやるべきことが終わったら、と、約束したことがある。それが叶えられるまで生きている必要がある。

「でも、こうやって休暇を貰えるとは思わなかったな。」

「本当にね。 ティエリア、部屋の番号は覚えてる? 何階だったかな? 」

 マンションのエントランスで、部屋番号を押したら、こちらが声を出す前に、「どこに寄り道してやがるんだっっ、おまえさんたちはっっ。」 と、元気なニールの怒声で迎えられて、ふたりして爆笑した。




 翌日の夕刻、吉祥富貴へ招聘されたマイスターふたりが親猫と一緒にやってきた。お客様がいらっしゃるまでに、衣装を合わせておかなければならないからだ。もちろん、それは、オーナーと、このはぴばを依頼したお客様からのオーダーがある。

「やっぱり、アレルヤ君はサイズが大きくなってるなあ。」