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こらぼでほすと にるはぴば

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 部屋に戻ったら、鷹がリビングで転がって寝ていた。それも、ソファセットが、こたつに変わっている。たまにやられるので、ニールのほうも慣れている。季節毎に、部屋も模様換えされるようになっているからだ。アレルヤとティエリアが滞在していた時は、洋風にソファセットが配置されていた。

「もう、いきなりだなあ。連絡してくれれば、俺も手伝うのに。」

 と、文句を吐きつつ、周囲を見回したら、チェストに極東風の人形が飾られている。その前には、四匹の猫の人形が置かれている。

「あれ? 」

 それは、どう見ても、自分たちのようで、黒猫が、いかにも刹那みたいで、しっぽをぴんと立てて睨んでいるのが微笑ましい人形だった。

「よく似てるなあ。」

「だろ? キラが作らせたらしい。・・・・おかえり、ママ。俺におやつ食べさせてくれ。」

 気配に敏感な鷹は、気付いて目を開ける。はいはい、と、ニールのほうも台所へ歩き出す。

「俺の寝てるとこだけ置かないっていうのは、イジメだよ? 鷹さん。」

「おまえ、当日、ここに居ないだろ? いらないいらない。」

 あっちこっちに配置されたものを、チェックしてきたハイネが、笑いながら、鷹の対面に座りこむ。で、何やら用意して戻ってきたニールに、鷹は唖然とした。ひらひらの可愛いエプロンをつけていたからだ。

「ママ、それは誘ってると見做していいんだな? 」

「はあ? ハイネがくれたんだ。使わないと勿体ないだろ? 」

 文句はハイネに言ってくれ、と、言いつつ、チーズトーストを、鷹に差し出す。

「それ、外では使うなよ? 三蔵さんだと、マグナムで撃ち殺されること請け合いだ。」

「わざわざ、持って行かなくても、向こうには悟空がプレゼントしてくれたのがあるよ。」

 母の日だったけど、と、内心で付け足して、ニールは笑っている。ハイネは着替えに、部屋に戻った。もう少しすれば、出勤の時間だ。

「店も飾ったんですか?」

 ここを、飾るぐらいだから、店のほうも盛大に模様換えしたのだろう。店は、もっと手の込んだことをしているはずだ。

「ああ、明日、キラの出身地域では女の子のイベントなんだ。それで、前夜祭から盛り上げようってことで、あの人形のもっと派手なやつを、店に飾ってる。明日はオーナーも来るらしい。」

「へぇー女の子のイベントか。だから、こういう可愛い人形を飾るわけか。」

「まあ、女性は、いくつになっても、女の子だからな。今夜は、昔、女の子だったお客様がいらっしゃる。」

「そういう言い方は、どうなんですかね? 」

「事実だろ? おまえさんも、たまには、オモテに出て来いよ。」

「まあ、トダカさんの助手ぐらいなら。」

 今のところ、ニールは店の裏方を手伝っている。体調が優れないことが多いし、ラボのほうへ出向いていることもあるから、滅多に拝めないレアなホストと呼ばれている。

「今夜のお客様は、某王国の女王様だ。」

「はあ? また、不思議な生き物ですね。」

「信じてないだろ? キラや歌姫の知り合いで、以前、あいつらが無茶した時は匿ってくれた親切な人だ。こっちへ公務で来たから、顔を出すんだとさ。」

「信じるとかいうより、もう、驚くのは止めたんですよ。いちいち、驚いてたら、身がもたないから。」

「ははははは・・・違いない。」

 お茶お代わり、と、コップを、ニールのほうへ押しだすと、はいはい、と、継ぎ足してくれる。ハイネが着替えてきて、「俺にも。」 と、コップを差し出す。実際、レアなホストというより、出張ママで、寺へ借り出されているのが、一番多い。ある意味、みんなの世話をしているので、ホストより保父か家政夫のほうが向いてるよな? と、スタッフからは噂されていたりする。



 前日は、ほぼ、一組のお客様の貸し切り状態だったが、人数がかなりいらっしゃって、バックヤードも大忙しだった。オリエンタルムードのイベントと、それに関連した食事というのは、いたく、お客様を満足させられたらしく、かなりのチップを置いていかれたそうだ。

 てなわけで、バックヤードを手伝っていたニールは、翌日は、ぐったりしているなんてことになる。朝というには、些か遅い時間に起き出して、居候の食事を準備すると、また寝転けるというナマケモノモード発動中だ。

「いや、俺はいいから、ママ・・・・うわぁー速攻かよ? まあ、いいか。夜まで寝かせとけば、それなりに回復するかな。」

 ぐーすかぴーとベッドで寝ているニールを確認して、ハイネのほうも連絡を入れる。予定では、三時ごろには、店に到着するはずだから、ちょうど、いい頃合だ。さて、それまで、俺は何をしていようかなあーと、ぐだぐだとテレビを眺めていたら、メールが着信した。

「あー、やっぱ、怠けさせてはくれないわけね? はいはい、行きますよ。」

 メールは、虎からで、荷物を受け取って運べ、という指示が届いていた。たぶん、八戒たちは、今頃、てんやわんやの忙しさのはずだから、それから比べれば、楽な仕事と言えるだろう。

 出かけるので、ニールを起こして、それを告げる。

「ママニャン、俺、仕事で出る。今夜は戻らないけど、荷物は、そのままにしておいてくれ。それから、晩メシは、こっちへ届くことになってるから出かけるなよ? 運んでくるヤツと食うこと。いいな? 」

「・・・・おう・・・・ん?・・・・晩メシ?・・・・え?・・・・」

「まだ、おやつタイムにもなってないよ。ほれ、これで栄養は補給しとけ。」

 ぬぼぉーっとしている親猫の口に、チューブパックの栄養ゼリーを銜えさせて外出した。





 飛行機を降りると、そこから目的地が別れるので、ここで解散となるわけだが、なぜか、ライルの機嫌は悪い。

「刹那、お茶ぐらいしようよ。」

 まあ、それくらいの時間なら、と、刹那も付き合うことにした。で、なぜ、こいつは、ケーキセットなんてものを頼むんだろうと思いつつ、放置する。あまり甘いものを食べないはずの男が、はぐはぐと楽しそうに食べているのが、ちょっと妙だ。

「うまいのか? 」

「うん、うまいよ。ああ、これ、あんたのおごりな? 」

 八個も年上だという自覚はないらしい。まあ、大した金額じゃないから奢るぐらいは構わないかと、「ああ。」 と、刹那も頷いた。途端に、ライルが、ニパッと笑う。

「奢られるのが、そんなに嬉しいのか? 」

「まあね。ケーキ食べるなんてのは、一年に一度くらいでいいよな。刹那に奢って貰うってのが、さらに、嬉しい。」

 アホっ子の言うことは、よくわからない。大明神様の天然電波語よりも難解で解読不能だ。ケーキの上に載っているイチゴを、ぽすっとフォークで突き刺すと、ライルが、はい、と、差し出す。イチゴは嫌いじゃないので、刹那も、はぐっと、それを食べる。それを見て、さらに嬉しそうに笑うライルは、大変幸せそうなのが、とても不思議だった。