東方疑異伝
「ええっ?! 本気ですかお嬢さま!?」
先ほどまで氷で出来ていたような顔が驚きに変わる。
「えぇ本気も本気よ咲夜。 こいつがこっちに来たのも元はと言えば私等に責任があるし」
レミリアは烏騅の方を向き、ニヤッとまた笑った後、咲夜に何かを耳打ちした。
「ちょっ…ちょっと待って下さい。 責任って、この人がここ現れたのはお嬢さまがなにかなされたからなのですか?」
「そうね。 でも今それを説明するのは面倒だし、時間がないわ。 ちゃんと後でそれは説明するから安心なさいな」
「待て待て待て! なんの話だ? 順に説明をしてくれ」
「だから烏騅、貴女をこの私が雇うと言っているのよ。 光栄に思いなさい」
レミリアはない胸を張って自慢気に言う。
「なんで俺が…」
「じゃあ聞くけれど、他に泊まる場所あるの?」
うっ…と言葉につまる烏騅。
そもそも彼女は多分この幻想郷の住人ではないし、幻想郷自体を知らなかった。
そんな人が泊まる場所があるとは到底思えないとレミリアが思い付いた末の雇用である。
「心配しなくても給金はちゃんと出すし、三食部屋付きよ」
烏騅は少し目をつむった後。
「本音を言うと、殺されかけたとこにいるのはごめんだが……選択肢はないんだよな……わかった、わかりましたよ。 働かせて貰いますよ」
一度は殺そうとしてきた相手に仕えるというのも何か変な話だが、住む場所に困らなくなるのは助かるというものなのだ。
とりあえずこのお嬢さまのご好意に甘えるとしようと烏騅は心の中で呟く。
「決まりね。 それじゃあ咲夜、後は頼んだわよ」
「ちょっ……ちょっとお嬢さま!!」
レミリアは咲夜に全てを任せ、出て行ってしまった。