東方疑異伝
「大変だな。 えーと、十六夜さん」
がっくりと肩を落としている咲夜に声をかける。
「…咲夜でいいわ。 まぁ私が反対しててもお嬢さまの決定は覆らないからね。 それより烏騅だっけ? 貴女…動けるの?」
レミリアの時とは違い、結構軽い口調で話してくれる。
烏騅にとっては正直その方が堅苦しくなくて助かるというものだ。
「包帯だらけだけど、動いても痛みはないな」
烏騅は少し体を動かす。
包帯のせいで少し動きにくいが、いつもの調子で動けた
。
「そう。 包帯は念のためだけれど、大丈夫そうね。 それにしてもあの宇宙人の薬はよく効くわね」
「宇宙人?」
烏騅が宇宙人という単語に首をかしげる。
「あぁ、こっちの話よ。 それよりその格好じゃあちょっとアレだから服を支給するわね」
「ん…あぁ…助かる」
烏騅は自分の服を見てから答えた。
右腕側は足の出血を抑えるためにやぶったので肩口からなく、他もまともな部分はないのではないかというくらいボロボロだった。
「えぇっと、どういうタイプのメイド服のがいいかしら? 普通の? それともフリルが多めのがお好み?」
「ぶっ……ちょっ、ちょっと待ってくれ!! 俺は男だ!」
「えっ……?」
咲夜は烏騅をまじまじと見つめる。
その反応に烏騅は頭を抱えてうずくまった。
ただえさえ少し中性的な顔を気にしているので、女装などさせられてはたまらないと心で叫ぶ。
「えぇっと…あぁ・・・あの、そ、それは失礼したわね。 ごめんなさい」
先ほどまで淀み無く言葉を発していた咲夜が初めて言葉に詰まった。
「あぁ、よく言われてるよ。 まだ慣れないし、これからも慣れないだろうけどね……」
「サッ・・・・・・サイズが合うかは分からないけど今から持って来るわ」
気まずくなった雰囲気から逃げ出すように咲夜は逃げるように部屋を出て行った。