東方疑異伝
咲夜について行き、ついた先は紅魔館正面入口の門に通じる中庭。
噴水に、庭に咲いている色とりどりの花、整備された道等、完璧と言っても良い程の完成度を誇っている中庭である。
烏騅はそれらを眺めながら咲夜の後をついていく。
「えぇ……っと、咲夜さんが案内してくれるのか?」
正門近くまで来たときに、咲夜の他に誰もいないため烏騅は彼女に聞いた。
「いいえ、うちの門番を案内兼荷物持ちにつかせるわ。 えっと……中ご……美鈴はどこかしら?」
咲夜は首を軽くふって答えると何かを探すようにあたりを歩き回る。
「ん……? あそこに誰かいる……咲夜さん、あそこに誰かいる」
正門からちょっと離れた木陰に緑色の人影がちらちら見える。
「あぁ、そっちにいたのね。 烏騅、あそこまで行くわよ」
といわれるがままに木陰の方に行くと、いかにもチャイナドレスのようなものを着て、中華帽に『龍』と彫られたバッチを付けている格好の女性が立ったまま寝ていた。
「あぁもうまたこの子はサボって……烏騅、ちょっと後ろ向いてて」
「えっ? なんで?」
「いいから後ろ向いてなさい」
烏騅は頭に『?』マークを浮かべて言われるがまま後ろを向く。
刹那、断末魔にも似た悲鳴が響き、烏騅は慌てて後ろを向く。
「……えっと、なにがあったか聞かない方が良い……です……よね?」
「えぇ、その方が説明の手間が省けるわ」
咲夜はにっこり笑ってこたえる。
居眠りしていた門番は非常に描写に困る状態なのでここでは割愛させて頂く。