東方疑異伝
「えっと烏騅さんでよろしかったですよね?」
咲夜が光の速さで消えた後、美鈴がこちらを向いて話しかけてくる。
「あ……あぁ」
烏騅はまだドキドキが収まらないらしく顔が赤い。
「これからよろしくお願いしますね!」
美鈴はいきなり烏騅の手を取るとブンブンと勢いよく降る。
「よ……よろしく」
「それじゃ行きましょうか」
「へっ?行くってどこに?」
美鈴に顔を近づかされて我を失ったのか、烏騅はすっとんきょうな返事をする。
「どこって買い出しに決まってるじゃないですか」
そうだったと烏騅は自分で頭をぴしゃりと叩く。
「えっと、あの~大丈夫ですか?」
「あぁ……ちょっと今日はいろいろあってな」
「そうですか、悩みがあったら相談してくださいね。 それじゃ行きましょうか」
「あぁ………というかなに買うの?」
「買うものですか? これです」
と言って先ほど咲夜から渡されたリストを見せてくれた。
単位がグラムじゃなくてキログラムだったり、ひとつ0が多かったりとまるで学校ひとつ分の人数で大宴会でもやるのかというような食材の数だった。
「……この量……二人で運べるのか?」
「ん~多分大丈夫ですよ」
美鈴はデカイ胸をポンッと叩いてカラカラ笑う。
「……(俺はともかく彼女に多く持たせられないな。 男のプライドとして)」
行く前から帰りの心配している烏騅を美鈴が励まし、とりあえず人里に向かった。
……少年、少女移動中