東方疑異伝
「えぇ……っと咲夜さんの部屋はここで良いんだよな」
何とか迷わずに咲夜の部屋までたどり着き、ドアをノックしてから開けた。
「あれ?」
またナイフでも投げられるんじゃないかと冷や冷やしながら部屋の中に入ったが、誰もいなかった。
「おかしいな。 どこにいるんだろ」
とりあえず部屋を出てどこにいるか考えてみる。
「……って俺はここに来たばかりなのに場所なんか分かるかぁぁぁい!!」
その大声にそばでダルそうににシーツを運んでいた妖精メイドがビクッと驚いた。
「……っと……いきなり大声出して驚かせて悪い。 すまんが、咲夜さんはどこにいるかわかるか?」
「えっとその前に……貴女はどちらさまですか?」
妖精メイドはシーツの入った籠をそばに置いて警戒しながら烏騅に問い掛ける。
「えっと……俺は烏騅って言うんだけど、咲夜さんから聞いてないか? 訳ありでレミリアに雇われたんだよ」
「烏騅……烏騅……? ………あっ!! 貴女が咲夜さんが言っていた新入りさんですか」
妖精メイドは今にも逃げ出しそうな雰囲気からなんとか安心した表情になる。
「そうそう、分かってくれて……」
「すいません、名前からてっきり男の方だとばかり……」
『男の方だとばかり』と聞くが早いが烏騅は手と膝を床につけて落ち込む。
『男物の燕尾服を着てるんだから普通男だと思わないか?』とか、『どんな格好しても女に間違えられるんだったらいっそ女の格好を………』とか思ったり、彼は大変混乱中である。
「えっと……何かお気に触りましたか?」
「よく間違えられるが、俺は男だ」
少年説明中………
―五分経過―
「すいません! すいません! わ……私はまた勘違いをしてしまって」
顔を赤らめながら必死に謝り続けてる妖精メイドに、いい加減説明疲れたという感じの烏騅。
「あぁ……分かってくれたんならいいよ……それより咲夜さんがどこにいるかわかるか?」
「えっ……えっと……はい……咲夜さんは、向こうの階段を登った先のレミリアお嬢さまのお部屋にいるかと思います」
妖精メイドはいくつかある階段のうち、少し大きめな階段を指差した。
「あ~上のどの辺なんだ?」
「上に行けばすぐわかりますよ。 お嬢様のお部屋はとても大きいので」
「助かったよ。 ありがとう」
ようやく道が分かった為、胸をなで下ろして安堵の表情を浮かべる烏騅。
「あの~? 私はそろそろ失礼していいですか?」
ちょっと上目使いで言うメイド。
「ん? あぁ、呼び止めて悪かったな」
「それでは失礼します」
一礼して籠を持ち上げて去っていく妖精メイド。
烏騅はそれを見送ると階段を上がっていった。
少年移動中・・・・・・