東方疑異伝
「う……あつつ……ってここはどこだ…?」
『彼女』は頭をおさえつつ起き上がる。
「ようやくお目覚めね。 あんたはどこの誰なのかしら?」
「……あんたら何者だ? 羽根とか生えてるし…というかこの薄暗い図書館はなんなんだ?」
パチュリーが口を開きかけたのをレミリアが制す。
「質問を質問で返すのは感心しないわね。 それに人の屋敷に勝手に上がり込んで、挨拶や詫びの言葉ひとつもないのかしら?」
「……なんかえらく上から目線だな。 誰も人様の家に勝手には上がり込む趣味はないってのお嬢ちゃん」
『お嬢ちゃん』、その言葉を聞いた瞬間にレミリアの雰囲気が変わる。
彼女、レミリア・スカーレットは長く生きているとは言っても外見は、翼がある以外はただの幼子である。
そしてレミリアは良くも悪くも吸血鬼としてのプライドが非常に高い。
「一部で人間を至高の存在と考える吸血鬼もいるけどね、力の弱い人間風情がこの私をお嬢ちゃん呼ばわりとはね……」
『彼女』は黙ってレミリアの方を見ている。
「今すぐにでもぶち殺したくなる衝動に駆られるわ。 ん~だけれどもすぐ殺してしまっては面白くないわね。 貴女の側の壁に剣があるからそれを取ってかかってきなさい。 武器を取るまでの間なら何もしないから。それとも弾幕ごっこのがお好みかしら?」
幻想郷としてのルールで相手しようか、人間として相手しようか聞いてきているが。それが彼女にはわかるはずもない。