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こらぼでほすと 拾得物1

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 となりで、クサナギからの通信を受け取っているニールも、ほっとしている。ラボに残ったのは、トダカを責任者として悟浄、八戒、ニールという陣容だ。トダカの親衛隊は、クサナギのほうで動いている。

「後始末が大変そうですけどね。」
「そこは、連合さんの仕事だろ? せつニャンたちも無事みたいだから、よかったじゃないか、ママニャン。」
「怪我とか、どうなんですね? 」
「大したことはないさ。ただ、さすがに、今すぐ降りてくるわけにはいかないから、ほとぼりが冷めるまでプラントのほうで隠れるというところだよ。」

 いくらなんでも、あの目立つピンクの戦艦で、堂々と月周辺を飛び周り、そのまんま地上に降りるなんてのは、悪目立ちだから、と、トダカは説明する。実際は、マイスターたちの治療なんかがあるから、プラント方面へ航行している。マイスターたちは降りられるようなら、プラント経由か軌道エレベーター経由で、単独で降りてくるだろう。

「おまえ、ぼちぼち、寺へ帰れよ、ママニャン。三蔵から呼び出しがかかるぞ? 」
「そうですね。・・・・一ヶ月ほど、こっちに居たからなあ。」
「悟空が、そろそろ学校が始まりますからね。また。お弁当、お弁当って五月蝿いですよ? 」

 バックアップ担当といえ、ここ一ヶ月は、忙しかった。地上と宇宙の連絡が、頻繁だったし、各国や連合の動きも激しかったからだ。それらを捌くのに、四人だとローテーションでも厳しかった。普段は寺に住んでいるニールも、バックアップ担当として、ラボに詰めていた。そろそろ一ヶ月を越えているから、亭主が五月蝿いだろうと、悟浄は言っている。

「明日、帰ります。・・・・今日は俺が常駐してますから、みんな、休んでください。」

 MS組も撤収したので、こちらから指示することもない。緊急に備えて、待機するだけだから、一人でいいですよ、と、他の三人に声をかける。だが、三人は、おいおいと、ツッコミを入れる。

「今なら、クスリを使わなくても眠れるだろ?  横になってきなさい。」
「トダカさん、こういう場合は、布団に叩きこむほうが早いって。」

 そうだな、と、トダカが立ち上がって、ニールの腕を掴んで歩き出す。え? と、連行されているほうは、驚き顔で引き摺られている。刹那たちの動向が気になって、よく眠れていなかったのは、誰もが知っていることだ。

「まあ、これで、一段落だ。全部終わったわけじゃないが、ママニャンの不眠症も治るだろうよ。」

 引き摺られて姿を消したニールに、悟浄は、頬を歪める。最大の敵は倒れた。やはり、刹那もキラと同じように、管理された平和を拒否した。それが、世界のためになるのかどうかは、わからないが、自分で切り開く未来というものは確保された。

 それは可能性を感じられる未来だが、弱いものには辛い世界でもあるのだ。キラは、それでいいと戦ったし、刹那も未来を決めるのは、自分だと戦った。やはり、刹那は、『吉祥富貴』にいるべき人間であるらしい。

「キラくんたちが戻ったら、店を再開しませんとね。・・・・僕は、どうも、こういう電脳世界というのは苦手ですよ。」
「俺も、こういうのより身体を動かすほうがいいな。」

 急遽、借り出されて手伝っていたが、こういうのは、八戒も悟浄も苦手だが、人手が足りなかったので、仕方ない。クサナギまで動かすなんてことになって、いつもなら、フォローに回ってくれるトダカ親衛隊まで宇宙へ上がったからだ。

「平和が一番です。」
「まったくだ。多少、腐ってて、程よく熟れてる世界なら住み易い。」

 ふたりして、のんびりと面前のパネルを見ている。そこに映っているのは、青い地球というやつで、衛星軌道上からの映像だ。カタロンと連合の艦隊が、そこに行儀良く並んでいるところを見ると、情報の交換や補給でもしているのだろう。この騒ぎで、店に来る客たちも忙しかったことだろう。

 『吉祥富貴』に通う上得意というのは、政界財界軍事関連の人間が多いので、この騒ぎで遊びどころではなかったはずだ。騒ぎが沈静化するまでは、店のことなんて忘れられているに違いない。その代わり、落ち着いたら、お客様たちも動き出す。それまでに、準備を整えておかなければ、と、八戒は考えている。店は改装ということで、昨年の年末辺りから休んでいた。

「内装を弄って、雰囲気を軽くしましょうか? 」
「ああ、どうせ、また、マイスターのお披露目もするだろうしな。アスランが、戻ったら打ち合わせしろよ。」

 いちゃいちゃしている自覚はないので、ふたりして普通に喋っているつもりなのだが、戻ってきたトダカは、こりゃ熱くて入れないな、と、別荘のほうへ逃げ出したほどの熱々ぶりだった。



 エターナルは、プラントのドックへ引き上げた。そこで、整備と補給をして時間を潰す予定だ。

「アレルヤたち、どう? 」
「みんな、比較的軽傷みたいだから、一ヶ月くらいで、どうにかなるだろう。ちびが、一番大怪我なんだが、異常に回復が早い。」

 あー、刹那は純粋種とやらになったもんねーと、並んでいる医療ポッドの中身を覗きこみつつ、キラが言う。ある意味、スーパーコーディネーターより性質が悪いかもしれない新人類様だ。

「だがな、キラ。ひとつ、いいことが判明した。」

 虎がもったいぶったように、書類をぺらぺらと振る。

「なに? 」
「ニールを治せるかもしれない。ただし、ダブルオーとちびが揃っていないとダメだから、今すぐとはいかないがな。」

 CBを逃す際に、世間話みたいなことで、虎が知りえた情報が、かなり有意義なものだった。操船しているラッセが信じられないけど生き返ったよ、と、言ったからだ。刹那がフルドライブでトランザムしたGN粒子を浴びた途端に、それまで死にかけていたラッセは復活したらしい。それが、期間限定の効果なのか、その辺りは、まだ不明だが、希望はあるのだ。これから、CBに戻って、その辺りの調査もしてもらうように手配した。うまくいけば、ラッセと同じように弱っているニールにも効果はあるはずだ。

「ダブルオーって大破してたよね? うーん、二ヶ月とかでは無理? 」
「それは無理だ。まあ、うちのママは、あそこまで悪化させていないから、時間はあるさ。」

 ラッセは、そのまま組織で戦っていたから、肉体も酷使していた。それから比べたら、地上でドクターの監視付きで暮らしているニールのほうが、まだ悪化させる度合いは少なかったし、三蔵の上司が用意した漢方薬なるもので、かなり持ち直していたからだ。

「艦長、通信です。」

 ダコスタの声で、虎がパネルを操作する。相手は、このプラントの最高評議会議長様だった。

「やあ、バルトフェルトくん、久しいね。」

 いや、おまえと逢いたくないから避けてるんだ、と、虎は、内心でツッコミつつ挨拶する。そして、議長は、隣にほへーと立っているキラを見つけた。

「キラくん、逢いたかったよ。・・・・今、そちらへ顔を見に行こうと思っているんだが、何か欲しいものはないかい? 」
作品名:こらぼでほすと 拾得物1 作家名:篠義