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こらぼでほすと 拾得物1

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 しばらく、その言葉を噛み締めるように俯いて、顔を上げたら、ニールは笑っている。いつもどおりの顔をして、「それなら作りすぎたな。」 と、大鍋一杯のカレーや肉じゃがを指差している。冷凍するつもりだったから大量に作ったのだ。

「余ったら、冷凍しとけ。」

 別に、残ったら冷凍すればいいことだ。作りすぎなんてことは、寺にはない。食欲魔神は健在だ。実際に顔を合わせてきたハイネからの報告は、通信での連絡なんかより実感が湧くのだろう。ほっとした顔をして、大人しく三蔵の言に頷いた。

「はい。」
「ホームセンターは明日でもよくなったんじゃねぇーか?」

 明日からの時間が、ぽっかり空いたから、慌てることもないだろうと、坊主は思ったのだが、主夫の意見は違った。

「いや、ハイネが居る間に行かないと。結構、洗剤とか安かったから。・・・・ハイネ、一時間くらいしたら、クルマ頼む。」
「了解、じゃあ、小一時間、昼寝させてもらう。」

 チラシでチェックしたら売り出ししているものが多かったのだ。クルマでないと、運べないから、ハイネが居るうちに、と、また急いで料理を作りだしたニールは、また回線を切って寺の古女房モードに戻ったらしい。ハイネのほうも、ヘラヘラ笑って愛用の旅行カバンを担いで脇部屋へと歩いて行った。




 イノベイドの作り方は、案外、簡単だった。培養キットも、ヴェーダの中に見つかった。

 さて、と、ティエリアは考えた。素体も、ちゃんとあるから培養自体は、すぐに始められる。それなら、二ヶ月で、元通りの身体を作ることは可能だった。ただ、すでに生体反応のない浮かんだままの身体に愛着は感じている。できれば、あれからクローニングして培養したいが、それでは時間はかかる。

 ニールを驚かさないなら、素体で元通りの身体というのがいいわけだが、あの身体が使えるなら捨て難い。

「あのさ、ティエリア。」

 ヴェーダ内に存在する自分の片割れが、意識を向けてきた。しばらくは、動きがなかったが、やっぱりヴェーダの中で生きて居るらしい。

「なんだ?  」
「刹那は、きみが撃たれたことは知ってるんだから、元通りでなくても理解するはずだろ? とりあえず、あれを培養して二ヶ月で一個体を作って、それで降りればいいじゃない。その間に、もう一個体を培養して、元の大きさになったら連絡してあげるから、乗り換えればいいのさ。僕らの身体は、機械のパーツみたいなものだから、それが可能なんだよ。」

 元々、イノベイドとしての知識がなかったティエリアは、身体をパーツという考え方ができない。人間だと言い張っていたから、身体も、ひとつだと思っている。でも、早く逢いたいとは思っている。なんて、人間てのは、欲張りなんだろうね、と、リジェネは意識下で笑っている。

「リジェネ、それは可能なのか? 」
「ああ、簡単だ。素体じゃなくて、完成品として保存されているものに、リボンズがいくつあると思う? そういうことだよ。」

 リボンズは、意識を、すぐに新しい個体に移し変えた。つまり、簡単に乗り換えられるということを証明している。

「きみは、どうするんだ? 」
「僕かい? そうだね、あの身体は使えなくもないけど、新しいのを作ることにするよ。まあ、慌てることはないから、ゆっくりと時間をかけてね。今は、ヴェーダ内の隠ぺい工作のほうが先決だ。」

 今のところ、対外折衝などはする必要はない。イノベーターは滅んだと思われているのだから、動かないほうが得策だ。そのうち、その必要もあるだろうから身体は作っておくか、という程度のことだ。ティエリアのように、誰かに逢いたいとか言う用事もないのだ。まずは、イノベイドの製作している施設やMSの格納庫を隠す手配をやりはじめている。さすがに、この部分は新しい連邦に提供してやるつもりはない。それから、蓄積しているデータも、全ては開放しない。それらの選別をしてデータの振り分けもやっている。

「回収して、早速、始めようか? 早く逢いたいなら、さっさと作業をすることだ。」
「リジェネ、きみも来れば、どうだ?」
「今はいいや。せっかくの再会に水を差すのはやめておこう。そのうち、きみの兄弟として挨拶には行かせてもらうよ。」

 しばらくは、ここを独り占めして、優雅に電子の世界を、ふわふわと漂っていよう。それまでのように、一部しか使えなかった不自由を回顧して、情報の全てを理解するほうが先決だ。片割れは、人間としての生き方のほうが向いているのだろう。いそいそと、自分の元身体を、整備ロボットに回収させている。片割れの見ていたものは、自分にも見えていた。

 ・・・・・とても温かいけど、僕には必要ない・・・・・

 すぐに、年老いて消えて行く人間なんて、接触しても一時しか交流できない。それが、永遠と続いていくのだと理解したら、そんなことしなくなるものだ。

・・・・いや、刹那・F・セイエイは、長く付き合うことになるのかもしれないな・・・・・

 純粋種となった、あの青年だけは、どうなるのか計り知れない。だから、そのうち、接触はしておこうとは思ったのだ。




 二週間なんてものは、あっと言う間だ。アレルヤと刹那は、二週間で完治して、医療ポッドから出てきた。残るは、ロックオンだけだ。

「彼は、やっぱり一般人なんだね。」
「当たり前だ。こいつは、ニールと一緒だからな。・・・・・アレルヤ、ティエリアのことなんだが・・・・」

 地上で待っているニールに、どう報告しようか、と、刹那でも迷う。声だけは、届けられるはずだが、それで納得するかどうかが怪しい。

「正直に言うしかないよ。ヴェーダになっちゃったってさ。」

 目が覚めてから、刹那から、そのことは聞いた。生きてはいるが、触れられるものではなくなった、というのが、アレルヤにも辛い。ふう、と、溜息をついて、医療室から出ると、廊下の向こうからイザークとディアッカがやってきた。

「早いな、おまえたち。」
「僕らは、ナチュラルじゃないですからね。」
「もどきは? 」
「俺の嫁なら、まだ治療中だ。」

 もどきというのは、現ロックオンの呼び名だ。ニールが名前を返上したのだが、どうも呼びにくいと、『吉祥富貴』では、もどきと呼ばれている。刹那は、ミッション中でない限りは、ほとんどロックオンとは呼ばず、ライルもしくは、俺の嫁と呼ぶ。

「キラが、すぐに戻ってくる。おまえらに話したいことがあるらしい。」

 イザークは、ティエリアについてのことは知らない。アレルヤの救出が担当だったからだ。ちなみに、刹那は、鷹とアスランのコンビが担当で、もどきはシンとレイだった。

「トレミーは、無事に組織のドックへ辿り着いてる。連絡するか? 」

 ディアッカが、そう尋ねると、そうだな、と、刹那が返事する。どういう状況になっているか確認は必要だ。それに、こちらの無事も伝えなければならない。




「ガンダムと太陽炉は回収してもらったから、これから、また、新しい機体を作ることになると思うけど、しばらくは休みね。・・・・・・事後処理が終わったら、あたしたちも、一度、地上に降りて休むから、あなたたちも、そうしてちょうだい。」
作品名:こらぼでほすと 拾得物1 作家名:篠義