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こらぼでほすと 拾得物3

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「だからぁー、そのストレート言語を、どうにかしろってっっ。俺、おまえの教育方針で、そこだけ間違ったと、後悔してるよ。」

 それ以外は、ちゃんとリーダーらしい資質も育ったし、度胸も知識も、きっちりと備わっているのに、コミュニケーション能力だけが欠落しているのが、ニールには、痛い失点だ。もっと情緒を育てるべきだったと、子育ての失敗を感じるのだ。

「ライルも一緒でいいじゃん。なら、客間に布団を敷くよ。」

 悟空のほうは、刹那のストレート言語に慣れているから、意味もわかっている。スタスタと部屋の準備に出ていった。

「おい。」
「はいはい。」

 で、坊主のほうは、空いたグラスを振る。それを持ち上げて、お湯割り焼酎梅干入りなんてものを、ニールが手早く作ると、「これで終わりですよ。」 と、渡している。この辺りが夫夫らしいと言われてる阿吽の呼吸だ。

「ライルも飲むんなら、用意するぞ? 」
「兄さんは? 」
「俺は、明日の下ごしらえがあるから飲まない。刹那は? 」
「ちょっと飲む。」

 じゃあ薄めにな、と、カルピスサワーなんて作って渡していたりするのが、おかんらしい。刹那は、かなりの量が飲めることが判明している。たぶん、悟空も付き合うだろうから、ライルにも同じようなものを作った。それから、明日の準備のために台所へ立つ。軽いピクニック程度だから、大袈裟にするつもりはないが、それでも五人前のランチボックスなんてことになると、結構大事だ。

・・・・・おにぎりと、チューリップと卵焼き。それから、スティックサラダと・・・・うーん、コンニャクでも煮るか・・・・・

 デリバリーが届くということだから、簡単でいいだろう。たぶん、暇人のハイネとか、沙・猪家夫夫とか、そういう人間もやってくるから、足りなければ、そこから作ることも可能だ。手羽元に包丁をいれて、くるっとひっくり返すと、チューリップの形になる。これに、醤油タレを搦めて朝からから揚げにすれば、チューリップになる。後は、コンニャクとごぼうを、炊きモノにしておけば体裁は整う。おにぎりの具は、シャケと梅干と昆布あたりでいいだろう。そこまで、考えて、はあ、と、息を吐いた。

・・・・なんで、ライル?・・・・

 もう、その一点に尽きる。なぜ、ライルを嫁なんて定めたのか、ほとほと、刹那の好みというのがわからない。アザディスタンのお姫様は、ライルと同い年で、姉さん女房ということなら、あちらのほうが妥当だろう。それが、何があったのか、ライルなのだ。

・・・・そういや、トダカさんが、刹那とライルの間に、何かあったらしいとは言ってたけど、これのことだったんだな・・・・・・

 いや、男同士というのを差別するつもりはない。『吉祥富貴』には、そういうカップルもいるし、違和感も嫌悪感もない。

・・・・いや、ほら、双子だからさ。刹那って、俺の顔が好みだったか? 違うよな?・・・・

 ほぼ同じ顔で、片方が嫁っていう時点で、もう片方としては、複雑だ。もう、七年か八年も刹那と付き合っているわけだが、そういう素振りをされたことはない。今でも、たまに刹那と一緒に寝ているが、本当に寝ているだけだ。

 うーん、と、唸りつつ、無意識にごぼうの皮を削っていたら、「へえー、すごいなあ。」 と、ライルの声がした。

「なんか足りなかったか? 」
「ううん。・・・・えーっとね、一応、説明しておくけど、刹那はノンケだったよ? 俺が、迫ったら、なし崩しに付き合ってくれただけだからな。」
「へ? 」
「俺は、セフレでいいと思ったんだけど、刹那は、ちゃんと真面目にお付き合いを考えてくれててさ。俺が、別に恋人作ってた時は黙っててくれて、その恋人なくしてから慰めてくれてさ。『俺にしとけ』って言われて、もう、俺、メロメロ。・・・・だから、刹那が俺に惚れたんじゃなくて、俺が追い駆けて無理矢理落としただけなんだ。あんたが思ってるような関係から始まってないから、説明しとこうと思ってさ。」
「ライル、それ、マジか? 」
「ああ、大真面目。だって、刹那、やり方知らなかったし。」

 最初は、俺が自分で慣らしてたんだぜ、と、笑いつつ言われても、ノンケのニールには頬が引き攣る内容だ。

「その生々しい話はいらないから。・・・・あのさ、それなら、おまえ・・・」

 刹那と縁を切ってくれる気は・・・・と、言おうとしたら、先にライルに反論された。双子だと、なんとなく通じるものがあるらしい。

「ヤダッッ。刹那と結婚したからな。それに、俺は組織で所属したまんまだ。」

 これからも、組織で活動して行くのだから、今後も離れるつもりはない、と、ライルは言う。まあ、そこのところは、そうだろう。ロックオン・ストラトスである限り、組織から離れることはない。

「うん、組織のほうは、よろしく頼むよ。」

 戻れるものなら戻りたいが、とてもじゃないが、無理そうだ。だから、そちらは、ライルに任せるしかない。そのうち、刹那の目は覚めるかなあーと、親猫は、そう考える。

「ちょっと聞きたいんだけどさ。ずっと、墓に花を供えてただろ? あれ、兄さんじゃなかったのか? 」

 何年か前に、命日に花がなかった時はあったが、それ以外は、必ずといっていいほど花があった。自分が先だった時は数日してから確かめたから間違いない。必ず、白い花束が置かれていた。どこへも行けないはずの兄は、それをどうしていたのか、と、疑問だった。あれで、ライルはニールの生存を確認していた。

「刹那とティエリアに頼んでた。その時期になったら、どっちかが花を置きに行って、おまえが供える花も確認してくれてたんだ。・・・・・おまえが無事か確かめるのは、それしかできなかったからさ。・・・・・・今年は、行けなかったんだ。」

 頼みの刹那もティエリアも、本格始動したCBのために休暇は取れなくなった。だから、今年は諦めた。まあ、ライルが生きていることは、組織にいるから、以前より判るから、そういう意味でも必要ではなくなったというのもある。

「俺も行ってないよ。・・・・だから、降りて、先に、あそこへ行ったんだ。ちょっとやることもあったからさ。あんたの名前、彫ってきたぞ? 」
「あはははは・・・・刹那から聞いた。まあ、いずれ入るから、それはいいさ。」
「なあ、兄さん。あんたさ・・・・・刹那のことさ・・・・」
「おまえみたいな気持ちはないよ。どっちかというと保護者の気分だ。・・・・・八年前は大変だったんだぞ? 全然、言うこときかなくて、野良猫でさ。単独行動だし、もう、いろいろと神経疲れることばっかりだった。・・・・・俺も、今の大人になった刹那と初対面してりゃあ、そういう気になったかもな。」

 野良子猫の世話係なんてものを拝命したから、こんなことになっている。出会いが違っていたら、ライルみたいなことになったかもしれない。

「まあ、そうかもな。あんた、昔から世話焼きだったもんな。」
「おまえの世話はしてないよ。」
作品名:こらぼでほすと 拾得物3 作家名:篠義