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【カイハク】死が二人を分かつまで

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・・・・・・あの事故は、事故ではなかったのね。
サファイア様は、故意に命を奪われた・・・・・・愛した人の手で。


心が麻痺したように、何の感情も沸き起こらなかった。
ハクは、ただぼんやりとカイトの顔を見る。

「それでは、私を壊そうとしたのも」
「貴女の魔力を、魔道具に封じる為です」
「カイトさんは・・・・・・どうしてそのことを?」
「調べることが、僕の仕事なのです。魔道士は、外部からの干渉を嫌います。魔道士絡みの問題を調べ、原因を突き止めるのが、僕の役目です」
「ああ・・・・・・それで」


私に近づいたのも、調査の為だったのね。
サファイア様の事故のこと、マスターの研究のこと。
調べて、突き止めたら、もう終わり。


・・・・・・夢は覚めてしまったのね。


「カイトさんは、これからどうされるのですか?」
「そうですね。僕の仕事はこれで終わりといきたいところですが、今のマスターは、頼りないところがありますから。もう少し、手を貸そうと思います」

カイトは、肩を竦めて首を振ると、

「ジェード氏が何処へ向かったか、教えてください」

ハクは、真っ直ぐにカイトを見つめ返した。

「何故、私に聞くのです?」
「ハクさんがご存じだからです」
「彼は、私のマスターです」

ゆっくりと、自分に言い聞かせるように、ハクは繰り返す。

「彼は、私のマスターです。例え、罪を犯していたとしても」
「貴女の本来のマスターは、別でしょう。貴女の生みの親は。彼女は、肉体を葬られ、魂を封じられても、貴女の身を案じています」

カイトの言葉に、ハクは息を呑んだ。


『貴女は、私の娘』


あの優しい声が、手の温もりが、甘い香りが、一度に蘇る。
ハクの見開かれた瞳に涙が溢れ、零れ落ちた。


時に歌うように、冗談のように、優しく言い聞かせるように。何度も何度も繰り返し伝えてくれた言葉に、自分は一度も応えなかった。


一度も、『お母さん』と呼べなかった。



「公園・・・・・・通りのっ!か、角・・・・・・に、ある、アパートメント・・・・・・三っ階・・・・・・一番・・・・・・端のっ、部屋っ」

はらはらと落ちる涙を拭うこともせず、ハクはつかえながらカイトに告げる。

「助け・・・・・・て・・・・・・カイトさん・・・・・・『お母さん』を、助けて」

カイトは屈み込んで、ハクの頬を手のひらで拭うと、

「貴女のマスターに、約束しましたから」