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【カイハク】死が二人を分かつまで

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宿までカイトを引っ張ってきたルビーは、部屋に入ると早速声を荒らげる。

「あんたね!何、勝手に動いてんの!今のマスターはあたしなの!ちゃんと分かってる!?」
「ですから、そうお呼びしてます」
「呼び方だけじゃなくて!ちゃんと言うこと聞きなさい!見ず知らずの人形を口説くんじゃない!!」
「運命を感じました」

ルビーの怒りもどこ吹く風で、カイトはにこにこ笑い、

「彼女のことを、もっと知りたいです。詳しく調べてもいいですか、マスター?」
「遊びに来てるんじゃないのよ!」

ルビーは、トランクから白紙の本を取り出すと、

「目的を忘れないでよね。その為に、あんたを連れてきたんだから」

カイトは、気のない様子で本に視線を向けると、何かを思いついた様子で笑顔を浮かべて言った。

「日記帳にでもしたらどうですか?」
「ふざけんな!!」





花束を抱えて帰宅したハクは、用意しておいた食事に手をつけた様子がないのを見て、溜息をつく。


後で、何か書斎に持っていこう。


それさえも無駄になる気がしたが、だからといって放っておく訳にもいかない。
気持ちを切り替え、花を飾るのに手頃な花瓶を探しに行った。


あれこれ試した結果、サファイアが生前大切にしていた、白磁の花瓶に決める。
貰った花を一本一本活けながら、突然現れた求婚者を思いだし、ハクは自分の頬が染まるのを感じた。


い、いきなり結婚とか・・・・・・そんなこと言う人、本当にいるのね。


彼は、いったい自分を誰と勘違いしたのだろうかと考える。あの少女をマスターと呼んでいたけれど、彼女にもハクは見覚えがなかった。


マスターさんのほうも、私を知っているようには見えなかったし、やっぱり勘違いなのね。


自分が残念な気持ちになっていることに気付き、ハクは一人赤面する。


な、何考えてるの!あんな素敵な人、私なんか相手にする訳ないじゃない。もっと上流の、ちゃんとしたレディにお仕えする人形なんだわ。


淡い色の瞳と優雅な物腰をした彼が思いを寄せるのは、どのような女性なのだろうと、ぼんやり考えた。