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こらぼでほすと 拾得物6

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 八戒が事情を説明してくれて、はあ、と、アレルヤも頷く。それから、ハレルヤがチェンジして歌姫の前に立つ。

「うちのジジイは、どうしてる? 」
「別荘で静養されています。刹那とライルが世話をしておりますけど、あの二人は、ニールに甘いので、なかなか回復しておりませんわ。・・・・・ご無事で何よりでした、ハレルヤ。」
「あんたらのヘルプのお陰だ。」

 それだけ言うとアレルヤにチェンジした。一応、お礼のつもりだったらしい。着替えの風景でも眺めてみますか? と、アレルヤを促して歌姫たちも、借り切ったラウンジへと移動した。

 着替えが終わって、別荘へ向かうヘリに、その魔女とアレルヤとティエリアを押しこんで、八戒たちは見送った。こちらは、店の営業を理由に、向こうには行かなかった。


 梅雨明けまで、後少しとなると、随分と体調は安定する。今日は、久しぶりの晴天で庭へ降りたら、刹那が、ものすごい顔で追い駆け来た。

「外出の許可をした覚えはない。」
「日光に当たりたいだけだ。・・・・・おまえさん、こんなとこでダラダラしてるなら、ちょっとランニングでもしてこい。ライルもだぞ? 」

 そう命じたのに、右腕を取られて、木陰まで移動させられた。そこへ座れと強制的に座らせされる。

「俺たちが、ここを一周ランニングする間だけだ。ライル、走るぞ。」
「え? ああ。」

 刹那だと、別荘周辺を軽く流すように走っても小一時間とかからない。道なき道を進むなら、相当な距離を稼げるだろうが、そこまではしないだろう。たったかと走り出して行った刹那を追い駆けるようにして、ライルも走り出した。

 やれやれと部屋から本とミネラルウォーターを運んできて、その木陰で横になった。そろそろ、アレルヤとティエリアが到着するんじゃないかな、と、思いつつ空を見上げていた。

・・・・・無事な姿さえ拝めたら、それでいいんだけどさ・・・・・・

 これで終わりではない。また、マイスター組は組織で活動するから、一緒に暮らすことはない。今までよりは逢う機会は増えるだろうが、それだけだ。

 梅雨明け間近の空は、すでに夏の様相を呈していて、真っ青で気持ちの良い高さがある。それを眺めて、うとうとと目を閉じる。


 パラパラという音を夢うつつに聞いて、意識を戻した。が、まだ、眠くて目が開けられない。どうせ、怒鳴りこんでくるんだろうと思って、それまで安眠を楽しむことにした。具合が悪いことを、切々と注意されて、きっちりとした時間割生活をさせるティエリアが来ると、こんなことをしている暇はなくなるからだ。


 ドカンッッ



 軽い衝撃で目を開けたら、なんかおかしな生き物がいた。紫の髪に、白いレースのリボンを飾られた頭と、ピンクのふわふわとしたワンピースのちっちゃな女の子が、自分にしがみついていたのだ。

「お? 」
「だいじょーーーぶにゃ?」
「は? 」
「なじぇ、こんにゃとこりょでねていりゅんだっっ。」

 きゃんきゃんと、いろいろと喚いているのだが、言葉までは理解できなくて、ニールは、誰だ? と、起き上がった。かなり小さい。歌姫の関係者の子供だろうと思った。

「お嬢ちゃん、迷子か? 」
「にゃっっ?」
「お母さんとはぐれたんなら、一緒に探しに行くか? 」
「にゃにぃーーーーっっ。」

 ふと、視線を部屋のほうへ上げたら、そこには、大人数が並んでいた。なんだ、あそこにいるんじゃないか、と、思ったら、その中にアレルヤもいた。

「アレルヤ、久しぶり。」

 よっこいしょっ、と、子供を抱き上げて、その集団に近寄ったら、ゲラゲラと笑っている。

「ニール、久しぶり。・・・・・あのさ。」
「ティエリアは? 」

 まだ気付いてなかったらしい。聞いていたティエリアが、ぷうっとふくれっ面で、ニールの亜麻色の髪を、ぎゅーっと力いっぱい引っ張った。

「あだだだだだだーーーーーお嬢ちゃん? 」
「おりぃだっっ。おりぃは、ここにいりゅじょ、にーる。」
「うん? 」
「てぃえりああーでだっっ。」
「え? 」

 バタバタとニールの髪の毛を掴んだまま暴れるティエリアを、アイシャとマリューが回収する。

「我ながら、よくできたと思うのよね。」
「マリューさん? アイシャさんも、どうしたんですか? それに、この子がティエリアって・・・・・俺、全盲じゃないんたから間違うわきゃないでしょ? 」

 ティエリアのほうは、何か事情があって降りられなくなったから、代わりに似ている子供を連れてきたのか、と、ニールは勘違いしたのだ。

「ニール、このコがティエリアよ? ねぇーラクス? 」

 今度はアイシャが抱きかかえる。

「ママ、この子が正真正銘のティエリアです。・・・・・元の身体を壊してしまいましたので、新しい身体を製作したのですが、間に合いませんでした。」
「はあ? 」

 ティエリアが、生身のナチュラルな人間でないことは、ニールも知っていた。だから、歌姫の言葉の意味は判るのだが、かなり衝撃だったらしい。さっと血の気が引いて、足元がふらついた。

「ニール、ちょっと顔色が悪いよ? 座ったほうが・・・・」
「ああ、いや、大丈夫だ、アレルヤ。・・・・おまえさん、ティエリアなのか? 」

 アイシャの腕にいるティエリアに手を差し出したら移ってきた。だかりゃ、おりぇだといっていりゅ、と、ぷんぷんと怒っている。

「・・・・しゅまにゃい、にーる・・・・・もとのしゅがたまでばいようしゅりゅと、じかんが・・・・あにゃたのことがしんびゃいで・・・・・・」

 ぎゅっとティエリアが、ニールの首に腕を巻きつける。

「・・・・痛かっただろ?・・・・」

 その背中を、トントンと叩きつつ、ニールが静かな声を出す。肉体が再生できないほど壊れたというのなら、それは、とんでもない痛みをティエリアに与えただろう。激しい戦闘だったことは知っていたが、ティエリアの身体のことを考えると親猫の胸が痛む。

「そりぇほどでぇもにゃかった・・・・・・しんぴゃいさせてしゅまにゃい・・・・」
「このままなのか? 」
「今、元の大きさのは培養している。それが完成したら、そちらに移る予定なんだ。・・・・着替えがなくて、無理矢理、着せられたんだよ、ニール。だから、それは、ティエリアの趣味じゃないからね。」

 アレルヤがフォローすると、そうか、と、ニールも頷いた。やっぱり、いろいろとあったんだろうな、と、ティエリアを抱き締めて背中を叩く。お疲れ様、と、アレルヤとティエリアに声をかける。ふたりも、ただいま、と、返事した。


 しばらく静かになったが、すぐに、パンと歌姫が手を打って沈黙を破った。

「さあ、感動の再会は拝めましたから、お着替え第二段ですわ。」
「そうね。せっかく、一杯持って来たんだから、着替えさせないとね。」
「うふふふふ・・・・至福のトキね。刹那も小さいトキにスればヨカッタわ。」

 ほらほら貸して、と、ティエリアを腕から剥がされて、唖然としていたら、そのまま、ティエリアは連れ去られてしまった。しばらく、女性陣の遊びに付き合わされて、「二度と、こんな姿にはならない。」 と、ティエリアは憤慨したそうだ。


作品名:こらぼでほすと 拾得物6 作家名:篠義